前回の記事になりますが、成人において気管支喘息でテリスロマイシンを使用すると、ごくわずかですがメリットがありそうな印象でした。
小児でよく使用される類似の抗菌薬にクラリスロマイシン(クラリス®︎、クラリシッド®︎など)がありますが、この薬は抗菌活性だけでなく、免疫調整作用や抗炎症作用があると考える方もいるようです。このため、喘息発作で生じているサイトカインを調整してくれて、有効ではないかと仮説が立てられます。
この仮説の真偽に関して検討した研究を発見したので紹介します。
研究の方法
こちらの研究はアメリカのテキサスで行われた研究で、
- 4〜17歳
- 繰り返す喘鳴 or 喘息の診断あり
- 喘息発作が始まってから72時間以内
の小児を対象に行われています。
治療について
治療は、
- クラリスロマイシンを5日間
- プラセボを5日間
のいずれかをランダムに割りつけています。
アウトカムについて
アウトカムは、喘息の症状スコアだけでなく、鼻から吸引した鼻汁・血液などのサイトカインやケモカインも計測しています:
- TNF-α
- IL-1β
- IL-2
などなど。
研究結果と考察
最終的に43人の小児が参加しました。
クラリスロマイシンの治療を受けたのは22人、プラセボは21人でした。
過去の研究ではマイコプラズマやクラミジア肺炎に感染していたケースが多かったようですが、今回の研究でも53%(23/43)がいずれかに感染していたようです。
治療3〜5日後
治療を開始してから3〜5日後に再受診されています (28人)。
咳、呼吸苦、喘鳴、発熱、喘息スコアといった臨床的な指標は、クラリスロマイシンで治療したグループとプラセボグループではほとんど同じだったようです(データなし…)
サイトカインに関しては、TNFα、IL-1β, IL-8はプラセボグループでやや高い印象で、IL-10に関してはほぼ同等です。
治療3〜8週後
治療3〜8週後に2回目の再受診をしてもらっています (19人)。
治療直後と同じく、臨床的な指標は抗菌薬を使用してもほとんど変わりませんでした。
サイトカインに関しては、マイコプラズマやクラミジアに感染した症例に関しては、プラセボの方がIL-8やIL-10が高い印象ですが、そのほかの項目は治療グループ間でほとんど差はありません。
考察と感想
いくつか気になった点があるので、つらつらと書きます。
まずは追跡不能例の多さです。治療開始時から見ると「43人→28人→19人」とかなりの数が減少しています。流石にこれだけ減ってしまうと、サイトカインの検査結果を含めて妥当性は著しく落ちてしまいます。
また、臨床的な指標については「no difference」とだけ記載されており、具体的な数値の提示がなかった点もやや残念ですね。臨床医は気になる方が多いのではないでしょうか。
まとめ
小児の気管支喘息発作にクラリスロマイシンを使用しても、臨床的なメリットはほとんどなさそうです。
サイトカインの検査値は一部、改善していそうですが、追跡不能例が多く、追加検証が必要と思います。