過去に行われた成人や小児のRCTでも、アジスロマイシン(AZM)やクラリスロマイシン(CAM)といった抗菌薬が、喘息発作の患者に有効であったとするものがちらほらあります。
一方で、成人が対象になりますが、つい最近行われた後ろ向きの観察研究では有効性はなく、むしろ入院期間を延長するかもしれないというデータもあります。
小児でも類似のデータがないか確認したところ、発見したため、こちらで報告させていただきます。
研究の方法
今回の研究は、18歳以下の喘息で入院した小児を対象に行われた後ろ向きの研究です。
入院後48時間以内にアジスロマイシンが投与された患者と、そうでない患者において、
- 入院期間
- 再入院率
などを比較しています。
年齢、性別、人種、臨床症状、季節などを交絡因子として、backward selectionをしたstepwise regressionと、PS matchingの2通りで解析しています。
研究の結果と考察
5335名が入院し、174名(3%)が抗菌薬の投与を受けていたようです。
入院日数について
AZM N=174 |
なし N=5161 |
調整差 | |
入院日数 (IQR) |
3.0 (2.2-4.2) |
2.3 (1.8-3.1) |
0.18 (0.11, 0.26) |
こちらはlinear regressionの結果になりますが、アジスロマイシンを使用したグループの方が、入院日数はやや長いです。
PS matchingを行なっても同じような結果で、0.17日(0.05, 0.29)だけ長かったです。
再入院率について
再入院 | AZM N=174 |
なし N=5161 |
aOR |
7日 | 1 (0.5%) |
47 (0.9%) |
N/A |
30日 | 3 (1.7%) |
190 (3.7%) |
N/A |
90日 | ?? | ?? | 0.89 (0.46, 1.72) |
データの提示が不十分でしたが、まとめると以上のようになります。
7〜30日の再入院だとデータが少なくて多変量解析は行えておりません。
90日以内の再入院にすると、AZMを使用したグループの方が再入院のオッズは低めに出ていますが、この推定値は不正確です。
感想と考察
アジスロマイシンを使用すると、入院日数がやや延長するものの、再入院率はやや下がるかもしれないとも読み取れますが、解釈には注意が必要です。
後ろ向き研究ですので、交絡因子が紛れ込んでいる可能性が大いにあります。
仮に喘息で入院するお子さんがいたとして、抗菌薬の投与の有無を決めるのは、おそらく患者の重症度や背景ではないでしょうか。
アジスロマイシンを使用せざるを得ないような病歴・重症度だった人が、やや入院期間が長く、その後に綿密にフォローされたので再入院が少なかったなどの解釈も可能なわけです。
交絡因子の対処は大事ですが、著者らの選んだ変数では不十分と思いました。
病院で行われた研究のようなので、例えば入院時のバイタルサインや血液検査などを入れても良かったのではと思っています。
あと、上のテーブルに載せたように、データの提示が不十分で、解釈不能です。
さらに、stepwise regressionなどをこのご時世に使っており、著者らの統計学的なリテラシーも疑いたくなるような内容です。
まとめ
小児の喘息の入院患者において、アジスロマイシンを使用すると入院日数がわずかに延長する一方で、再入院率はやや下がるかもしれない結果でした。
統計学的な手法や交絡因子の対処など、問題点が複数あり、この結果では不十分と思います。