- 小児の喘息発作と抗菌薬の有効性の研究はいつ頃から?
- マクロライド以外にも検討された研究はある?
小児の抗菌薬と喘息発作の研究ですが、近年はマクロライドをトピックにしたものが散見されていました。
一方で、過去の文献を遡ってみると、1960年前後にもあります。今回は最もクラシックな論文の1つを紹介しようと思います。
研究の方法
今回の研究は1960年にイギリスから報告された小児のRCTになります。
100人の喘息患者をランダム化して、テトラサイクリンを予防的に投与し、喘息発作に有効かを検討しています。
対象となったのは、
- 4-15歳
- 過去6ヶ月に喘息の既往あり
などが該当しています。
治療について
治療は、10月から
- テトラサイクリン (20週投与)
- コントロール (プラセボを20週投与)
を投与しています。
これ以外の当時の標準治療(エフェドリン、抗ヒスタミン薬の点鼻、吸入など)はどちらのグループも行なっています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- 喘息発作の回数、期間、重症度
- 喘鳴の回数
- 吸入薬の使用回数
- 欠席
- 合併症や副作用
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に100名が参加しており、テトラサイクリンは50名、コントロールは50名です。
男児が6割、年齢は10歳以下が半数で、平均は10歳くらい、喘息の既往は6年間が平均です。過去1年で10-12回ほどの喘息発作を経験しているようです。
喘息発作の回数について
喘息発作の回数についてですが、以下の通りでした。
テトラサイクリン | あり | なし |
平均 | 9.1回 | 5.2回 |
内訳 | ||
0回 | 9 | 13 |
1-4回 | 18 | 21 |
5-9回 | 8 | 6 |
10-14回 | 8 | 2 |
15-19回 | 1 | 3 |
20-24 | 0 | 2 |
25回以上 | 5 | 1 |
テトラサイクリンを使用した方が発作回数が多い傾向にありました。しかし、この平均での評価は少しアンフェアです。なぜなら、偏った分布で、25回以上が多数あったテトラサイクリングループの方が圧倒的に不利だからです。
中には86回起こした小児もおり、これを除外すると10週間での平均発作回数は、7.5回 vs. 5.2回でした。
喘息症状のなかった期間
喘息症状のなかった症例を週毎に比較しています。
(論文のtable5を拝借)
あまり大きな違いはなさそうですが、コントロールグループの方がやや成績は良さそうな印象ですね。
喘息発作の期間
(論文のtable8を拝借)
喘息発作が生じた場合の期間も比較しています。
非常にわずかですが、テトラサイクリンを使用したグループの方が半日ほど短くなっています。
欠席の日数
欠席の日数も比較しています。
(論文のTable 11を拝借)
欠席日数はテトラサイクリンを使用していたグループの方がやや少ないですね。
テトラサイクリンは気道感染症、例えばマイコプラズマなどにも有効なので、予防効果があったのかもしれませんね。
感想と考察
今回の研究では、小児の喘息患者において、テトラサイクリンは発作予防になるかを中心に見ていますが、ほとんど効果はなさそうでした。
20週もの長い期間、テトラサイクリンを内服されており、耐性化の懸念があります。さらに、4歳から内服しているケースもあるようで、その後の歯牙黄染の状況など、大丈夫であったかと心配になってしまいます。
まとめ
今回の1960年に発表された、4-15歳の喘息患者を対象にした研究では、テトラサイクリンの長期投与は、喘息発作を予防するような効果はなさそうでした。
冬は感染症が流行しやすく、抗菌薬を投与すれば喘息発作を予防できそうに考えてしまいますが、実際のところは、そのような効果はなかったのです。
喘息の治療は1960年代から大きく変わっています。その点も考慮しながら解釈する必要があります。
- テトラサイクリンを小児喘息発作の予防目的に使用してもメリットはなさそう