「解熱薬はいつから使用して良いのか?」という純粋な疑問に答えるため、少し調査を続けています。
多くの小児科医は3ヶ月未満はNGと考えていると思いますが、それは副作用の問題なのか、それとも医療的な背景(重篤な感染症を見逃す、病院へのアクセスの妨げになる)のかは気になるところです。
今回は、新生児においてアセトアミノフェンの薬物動態を調査した研究を発見したので、そちらを報告させていただこうと思います。
- 新生児におけるアセトアミノフェンの薬物動態の研究は少ない
- 坐薬 20 mg/kgの単回投与では効果は不十分かもしれない
- 少なくとも血中濃度からみた安全性は担保されていそう
前回の記事はこちらになります:
研究の方法
対象となったのは、
- 正期産の新生児
- 痛みを伴う外科的な処置を行う状態
などが該当しています。
治療について
治療は、
- アセトアミノフェン 20 mg/kg/dose
を6時間毎に投与しています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- アセトアミノフェンの血中濃度
- 痛みのスコア
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に10人の正期産の新生児が対象となりました。
単回投与時のデータについて
ピークに達するまでの時間はの中央値は1.5時間でした。
ピーク濃度は 3.36 mg/L (2.11)でして、有効血中濃度(10-20)には達していなかったようです。
半減期は2.7時間(1.4)でした。
痛みも顔つきで評価していますが、有効血中濃度に達していないせいか、血中濃度と痛みの評価は相関が見られなかったようです。
ピーク血中濃度について(複数回投与時)
ピーク, 平均 (SD) | |
全員 | 10.79 mg/L (6.29) |
男児 | 15.34 mg/L (5.21) |
女児 | 3.64 mg/L (3.64) |
治療域は 10-20 mg/Lのようですが、複数回投与時にようやく達しているようです。
ピークが 120 mg/Lを超えるとtoxicityが出ると考えられているようですが、それよりはるかに下回る値です。
症例数が少なくて微妙ですが、吸収率に男女差があったようです。
感想と考察
新生児の場合はアセトアミノフェン坐薬を使用しても、20 mg/kgでは有効血中濃度に達しないようです。PK/PDからの推定ですと、初回は 30 mg/kg、その後は20mg/kgを示唆しています。
とはいえ、そもそも新生児に解熱薬を使用すべきかは、その状況にもよるのではないかと思いました。
例えば、生後3ヶ月未満の発熱は、自宅で解熱薬を使用というのはありえなくて、基本的に受診していただきたいと考える小児科医がほとんどでしょう。
使用する状況となると、入院中くらいでしょうか。ただ、発熱自体は感染症の勢いのモニターの指標にもなるので、あまり使用したがらない医師が多いかもしれませんね。
あるいは、痛みを伴う処置前に使用するくらいでしょうか。
まとめ
今回の研究結果によると、新生児にアセトアミノフェン坐薬 20 mg/kgを投与しても、有効血中濃度に達しない可能性が示唆されています。
安全性という意味では担保されているかもしれませんが、使用する状況、量に関してはまだまだ議論が必要な印象です。
アセトアミノフェンは…
- 新生児にも安全に使用できるかもしれない
- 通常量では有効血中濃度に達しづらい
- 発熱や痛みの根本的な原因について考える必要がある
前回の記事はこちらになります: