今回も中国のGuangzhou地区からの研究です。
- インフルエンザワクチンって6ヶ月〜1歳には効かないのでは?
と疑問のある方がいるかもしれません。また、臨床医でも「効かないから意味ない」と患者さんに説明をしている方もいますが、少なくとも2010年代の研究を見ると有効性はきちんとありそうです。
- 複数のシーズンで、インフルエンザワクチンが6-35ヶ月に有効か検討
- 2回接種すれば、乳幼児でも有効性はある
- ワクチン有効性(VE)はおよそ50-70%ほど
研究の方法
今回の研究は、2010-2011と2011-2012シーズンでインフルエンザワクチンの有効性を検証しています。研究方法は、マッチングを利用したケースコントロール研究です。
対象となったのは、
- 6ヶ月〜59ヶ月
- 基礎疾患のない小児
などが該当しています。
ケースはPCRで確定したインフルエンザ感染者です。コントロールは、年齢、性別、居住地域をマッチングした上で、ランダムに1:2で選別されています。
インフルエンザワクチンについて
インフルエンザワクチンは、
- Full
- Partial
- なし
のいずれかに場合分けされています。Fullはスケジュール通り接種された状態、partialは1回接種のみが主に該当します。
アウトカムの評価について
アウトカムに関しては、conditional logistic regressionを使用して、ORを推定しています。
ワクチンの有効性(VE)は、
- VE = (1 – OR) x 100%
で推定されています。
研究結果と考察
最終的に、2010-11シーズンは209人、2011-2012シーズンは1046人のインフルエンザ感染者が研究対象になっています。コントロールは3765名が選ばれています。
ワクチンの有効性について
シーズン毎に見たワクチンの有効性は以下の通りでした。結果は6-35ヶ月の注目しています:
年 | ワクチン | VE | 95%CI |
2010-11 | Full | 74.4% | (44.6%, 88.2%) |
Partial | 69.3% | (30.1%, 86.5%) | |
なし | Ref | ||
2011-12 | Full | 68.8% | (56.0%, 77.9%) |
Partial | 21.8% | (-6.1%, 42.4%) | |
なし | Ref |
2回接種した場合、ワクチンの有効性ははっきりと出ていそうですね。
シーズンによってもこのブレはなさそうな印象です。
感想と考察
中国のこの地区では、シーズン毎にインフルエンザワクチンの有効性を検証しているようで素晴らしいと思いました。手元にある文献だけでも、2009-2013年くらいまでは毎年のように見ています。
日本でも同じような試みができるはずなのですが、インフルエンザワクチンは任意摂取になってしまっており、誰がどこで受けたのか確実な情報が集められない状況です。
Case-control studyの利点として、安価で早く有効性を検証することが可能です。もちろん、コントロールのサンプル方法には専門的な知識が必要なので、疫学者が研究に関わる必要はあります。
今回のようにデータが整理されておれば、研究自体はそれほど難しくないのではと思います。
まとめ
今回の中国の研究では、インフルエンザワクチンは6-35ヶ月の小児をターゲットにしても有効性はありそうでした。
「乳幼児は効きづらい」と言われてはいますが、きちんと検証をすれば有効性を示唆した論文は複数あるのがわかります。年をまたいでも同様の結果が出ており、それなりにロバスト(頑強)な結果であると思います。
6-35ヶ月へのインフルエンザワクチンは、
- どの年でも2回接種すれば、有効性は認められている