科学的根拠のある子育て・育児

インフルエンザワクチンは、保育園に通園する乳幼児に有効か?[欧州のRCT]

インフルエンザワクチンの有効性を検証した論文を遡っていますが、徐々に古いものになってきました。

今回は、6〜36ヶ月の乳幼児を対象に行われたRCTがあるので、そちらを参照してみましょう。

ポイント

乳幼児へのインフルエンザワクチンは…

  •  インフルエンザ感染症のリスクを減らす
  •  中耳炎の合併リスクを減らす
  •  保護者の欠勤、乳幼児の欠席率を減らす
  •  ER受診率、抗菌薬処方率を減らす
マミー
マミー
どちらの国で行われた研究ですか?

Dr.KID
Dr.KID
ベルギー、フィンランド、イギリスなどのヨーロッパです!

 

研究の方法

今回の研究は、2000年にフィンランド、ベルギー、イスラエル、スペイン、イギリスで行われたRCTです。

対象となったのは、

  •    6-36ヶ月
  •    保育所に通園している乳幼児

などが該当しています。

治療について

治療は、

  •  インフルエンザワクチン
  •  プラセボ

のいずれかをランダムに投与しています。

インフルエンザワクチンは、経鼻ワクチン(生)を初年度に2回、2年目に1回投与されています。

アウトカムについて

アウトカムに関しては、

  •    インフルエンザ感染(PCRで確定)
  •  中耳炎
  •  安全性

などを見ています。

Dr.KID
Dr.KID
2年がかりの試験のようです。

研究結果と考察

70施設で研究が行われ、初年度は1616名、2年目は1090名が解析の対象となっています。気になる6ー12ヶ月の乳児ですが、全体の10%ほどです。

1年目の結果

こちらは1年目の結果になります:

  VE 95%CI
全体 (ITT) 83.8% (74.2% to 90.2%)
6-12ヶ月 83.4% (12.7% to 98.3%)

全てのインフルエンザ感染を対象にした解析ですが、患者全体も、6-12ヶ月だけに絞り込んだ解析でも、有効性は示唆されています。

国別でみた解析はこちらになります。

VE (95%CI)
ベルギー 76.3% -32.7% to 97.7%
フィンランド 90.4% 72.5% to 97.5%
イスラエル 82.8% 57.0% to 94.2%
スペイン 78.4% 30.2% to 94.9%
UK 91.8% 65.3% to 99.1%

異なる国での有効性を見ても、同じような結果が出ています。

 2年目の結果について

同じ患者で2年目の効果も見ています:

  VE 95%CI
全体 (ITT) 85.3% (78.3% to 90.4%)

2年目も同様のワクチンの有効性を認めています。2年目に関しては、1回投与で効果を推定しているようです。

国別でみた結果はこちらですね:

VE (95%CI)
ベルギー 93.3% (78.5% to 98.7%)
フィンランド 100% (80.9% to 100.0%)
イスラエル 74.2% (52.3% to 86.7%)
スペイン 86.0% (69.8% to 94.3%)
UK 83.5% (17.1% to 98.3%)

いずれの国でも有効性はありそうな結果ですね。

その他のアウトカムについて

そのほかもいくつかのアウトカムを見ています。

インフルエンザ関連の中耳炎について

インフルエンザに感染した拍子に中耳炎をきたす事はよくあります。そちらの予防効果もありそうでした。

中耳炎 1年目 2年目
ワクチン効果 90.5%
(68.3% to 98.2%)
96.9%
(81.1% to 99.9%)

リソースに与える影響

子供がインフルエンザに罹患すると欠席したり、仕事を休んだりする必要が出てきますが、そちらのアウトカムも見ています。

  1年目 2年目
仕事を休む 15.0%
(-2.8% to 29.7%)
45.1%
(26.0% to 59.4%)
保育園欠席 15.1%
(8.9% to 20.9%)
36.3%
(30.2% to 41.9%)
ER受診 13.7%
(-1.1% to 26.2%)
35.1%
(11.7% to 52.3%)
抗菌薬処方 -0.6%
(-18.2% to 14.3%)
28.2%
(9.1% to 43.3%)

1年目に仕事を休んだり、保育園欠席のリスクを減少させる効果はわずかですが、2年連続で受ける事で、この効果は大きくなっている印象です。

 感想と考察

ランダム化後に2年連続で追跡しており、なかなか面白い研究結果でした。

経鼻の生ワクチンのため、現在、日本では使う事はできないですし、近年は2歳以降が適応になっているため現場に医療で当てはまらない部分はあると思います。

しかし、乳児のデータが少ない中、有効性が示唆される内容や、保護者などの社会的な影響も見ており、素晴らしい研究と思いました。

2年目にもう1度ランダム化をしてみても面白かったかと思いました。

Dr.KID
Dr.KID
2年目でランダム化をすれば、2年目の治療効果も、交絡因子の影響を除外する事ができます。

まとめ

今回の研究では、6−36ヶ月の乳幼児にインフルエンザワクチンを使用すると、インフルエンザ感染のリスクを減少させ、中耳炎の合併率を減らし、医療機関受診率、抗菌薬処方率、欠席率の低下にも効果がありそうな印象でした。

マミー
マミー
6ー12ヶ月でも効果があったのですね。

Dr.KID
Dr.KID
全体の10%ほどが対象なので、サンプル数は少ないですが、有効性を示唆する結果だと思います。

まとめ

乳幼児へのインフルエンザワクチンは…

  •  インフルエンザ感染症のリスクを減らす
  •  中耳炎の合併リスクを減らす
  •  保護者の欠勤、乳幼児の欠席率を減らす
  •  ER受診率、抗菌薬処方率を減らす

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
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