前回、2012年のsystematic reviewとmeta-analysisの結果を説明してきました。
今回は、私が見逃していた観察研究の結果を紹介しようと思います。
まずは、2003-5年にかけて、アメリカでおこなわれたcase-control studyです。
- 2003/04と2005/06に行われたインフルエンザワクチンの研究
- 6-23ヶ月において、ワクチンの有効性はありそうな印象
- ただし、有効性は年によってばらつきあり
- スケジュール通り、予防接種を完了させることが重要
Eisenberg KW, et al.Vaccine Effectiveness Against Laboratory-Confirmed Influenza in Children 6 to 59 Months of Age During the 2003–2004 and 2004–2005 Influenza Season.Pediatrics. 2008 November ; 122(5): 911–919
研究の方法
対象となったのは、2003/04と2004/05シーズンで、
- 6-59ヶ月
- 救急外来やクリニック外来を発熱で受診した患者
が該当しています。
ケースはPCRでインフルエンザ陽性者、コントロールは陰性者でcase-control studyを組んでいます。
ケースとコントロールは、タイミング、地域、外来の種類でマッチングを行なっています。
ワクチン接種について
ワクチン接種は、
- Full: 2回完了 or 全シーズン接種 + 今シーズン1回以上
- Partial: 1回のみ
- なし
で分類しています。
アウトカムの評価について
アウトカムの評価に関しては、
- conditional logistic regressionでOdds ratio (OR)を計算し、
- Vaccine efficacy (VE) = (1 – OR) x 100%
を見ています。
研究結果と考察
最終的に288 caseと744 controlが03/04のシーズンに、197 caseと1305 controlが04/05シーズンに参加しています。
ワクチンの完全接種率は、それぞれ6%と19%でした。
ワクチンの有効性について
VEの結果は6-23ヶ月の小児のみを示します。
03/04 | VE | 95%CI |
Full | 28% | -130 to 77 |
Partial | 42% | -22 to 73 |
04/05 | ||
Full | 55% | 13 to 77 |
Partial | -3% | -70 to 38 |
03/04に関しては、インフルエンザワクチンの有効性は低いですが、ワクチンの有効性が示唆されています。
04/05に関しては、Full vaccineである場合のみで、有効性が示唆されています。やはりスケジュール通り、きちんと打つことが大事なのでしょう。
感想と考察
今回の研究では、症例対象研究でインフルエンザワクチンの有効性を乳幼児で確認しています。6-23ヶ月の結果に注目すると、有効性にばらつきはありそうですが、2シーズンを通して予防効果が示唆されています。
問題点として、コントロールグループの設定にありそうです。”test-negative control”という方法を使っていますが、要は外来に受診して検査陰性だった人をコントロールにしているだけです。
この方法ですと、コントロールグループが、一般的な母集団を反映しているか否か、判断が難しいです。場合によっては、選択バイアスが残っているでしょう。
まとめ
今回の研究では、症例対象研究でインフルエンザワクチンの有効性を乳幼児で確認しています。6-23ヶ月の結果に注目すると、有効性にばらつきはありそうですが、2シーズンを通して予防効果が示唆されています。
ただし、選択バイアスが混入しているかもしれません。
- 2003/04と2005/06に行われたインフルエンザワクチンの研究
- 6-23ヶ月において、ワクチンの有効性はありそうな印象
- ただし、有効性は年によってばらつきあり
- スケジュール通り、予防接種を完了させることが重要
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