日本国内の研究でインフルエンザワクチンの有効性を検証し、英語論文として報告されているケースは非常に少ないです。
一方で、日本では医療アクセスはよく、気軽にインフルエンザ検査をできる環境にあり、データを集めること自体は、日常診療の延長でもできそうな印象があります。
今回、2013-14年に行われた研究を見つけたので、そちらを報告させていただきます。
- 2013-14年の冬に行われた観察研究
- インフルエンザワクチンの有効性は、12-23ヶ月では60%ほどありそう
- 6-11ヶ月に関しては、サンプル数が不十分で、追加検証が必要
今回は、生後2歳未満の結果を中心に説明していきますので、他の結果については原著論文を参照されてください。
研究の方法
対象となったのは、
- 2013/14冬シーズン
- 外来クリニックに受診した患者
などが該当しています。関東を中心に22のクリニックが協力しているようです。
外来でインフルエンザの迅速検査を行いテスト陽性を「ケース」、陰性を「コントロール」にするtest-negative control designという症例対照研究が行われています。
ワクチンについて
ワクチンは、この時期は
- インフルエンザ不活化ワクチン(3価)
が使用されています。日本の接種スケジュールに基づいて接種されたか否かを確認しています。
ワクチン効果について
ワクチン効果に関しては、
- adjusted odds ratio (OR)を計測し
- VE = (1 – OR) x 100%
としています。
研究結果と考察
6ヶ月〜2歳までの患者の結果のみを提示します。
6ヶ月〜11ヶ月
6ヶ月〜11ヶ月のワクチンの有効性は以下の通りでした:
インフル | VE | 95%CI |
全て | 21% | -87 to 67 |
Type A | 30% | -85 to 74 |
A(H1N1)pdm09 | N/A | |
Type B | N/A |
ケースが少なく、パワー不足は否定できませんでしたが、VEは21%と低めで、95%信頼区間は広く、不正確な推定になります。
12-23ヶ月
12-23ヶ月の結果をみると、以下の通りです:
インフル | VE | 95%CI |
全て | 63% | 51 to 72 |
Type A | 72% | 60 to 80 |
A(H1N1)pdm09 | 67% | 15 to 87 |
Type B | 41% | 10 to 61 |
全体として63%ほどのワクチン効果を認めています。検定力も十分であったようです。
6-23ヶ月
6-23ヶ月では以下のような推定になりました:
インフル | VE | 95%CI |
全て | 57% | 44 to 67 |
Type A | 67% | 54 to 76 |
A(H1N1)pdm09 | 62% | 4 to 85 |
Type B | 29% | -6 to 52 |
全体としては57%とワクチン効果を認めていますが、インフルB型のみに絞ると29%と予防効果は小さくなっています。信頼区間も広めで、やや不正確な推定です。
感想と考察
日本でこのような研究が行われたことは意義が深いように思いますし、これからも類似の研究が沢山出てくると良いなと思いました。
6-11ヶ月に関しては、確かに予防効果は点推定は低いですが、信頼区間が非常に広いです。サンプル数が足りていない可能性はあるかと思います。「有効性なし(not effective)」はさすがに言い過ぎな感じもしました。
まとめ
6-23ヶ月の乳幼児に関しては、全体としてはインフルエンザワクチンの有効性はありそうですし、12-23ヶ月では有効性がありそうな印象です。一方、6-11ヶ月に関してはデータ数が不十分な印象です。
なかなかこの世代のお子さんのデータを集めるのは難しいでしょうが、サンプル数が増えた時の結果を見てみたいですね。
- 2013-14年の冬に行われた観察研究
- インフルエンザワクチンの有効性は、12-23ヶ月では60%ほどありそう
- 6-11ヶ月に関しては、サンプル数が不十分で、追加検証が必要
Test-negative controlの問題点はこちら↓↓