今回はアメリカで行われた観察研究の結果です。2003-2006にかけて、3シーズン分の有効性を調査しています。
本記事のポイントは以下の通りです。
- 6-23ヶ月のインフルエンザワクチンの有効性を3シーズンで評価
- 1シーズンのみ有効性が報告
研究の方法
今回はKaiser Permanent North Californiaのデータを使用した研究です。2003/04, 04/05, 05/06の3シーズンで行われています。
研究の方法はmatched case control studyで、具体的には
- インフルエンザ陽性患者を特定
- コントロールは、同じ居住地域、生年月日からマッチングして選定
- ワクチン接種の有無を確認
- Conditional logistic regressionで評価
をしています。
対象としたのは、同保険会社のデータにある6-23ヶ月の乳幼児です。
ワクチン接種について
ワクチン接種は
- Full: スケジュール通り
- Partial: スケジュール通りではないが接種
- なし
のいずれかに分けています。
アウトカムの比較について
アウトカムの比較には、
- conditional logistic regressionを使用して
- adjusted odds ratio (aOR)を計算し
- ワクチンの有効性(VE) = (1 – OR) x 100%を推定
しています。
研究結果と考察
最終的に約300名のケースと、1200名のコントロールが研究に参加しています。
シーズン別のワクチンの有効性を紹介します。
ワクチンの効果について
ワクチンの有効性(VE)の結果は以下の通りでした:
03/04 | VE | 95%CI |
Full | 10% | -90 to 60% |
Partial | 7% | -60 to 50% |
04/05 | ||
Full | -186% | -1130 to 30% |
Partial | -210% | -1370 to 30% |
05/06 | ||
Full | 63% | 30 to 90% |
Partial | 83% | 40 to 100% |
感想と考察
ワクチン効果を認めたのは2005/06年のみで、2003/04と04/05に関しては有効性は認めていません。
シーズンにより有効性が異なるのか、研究上で何か問題があるのかのいずれかかもしれません。
例えば、FullとPartialを比較しても、有効性はFull < Partialとなっており、医学的に解釈不能な結果です。さらに、この研究ではケースは各年で100人ほどで、十分なサンプル数とは言えません。さらに、慢性疾患のある小児も解析に入っており、統計学的に対処できるサンプル数ではなかったのかもしれません。
KPのような保険データがあるのに、わざわざcase-control研究をした理由も少し疑問です。私なら追跡可能なデータがあるなら、retrospective cohort研究を行なったと思うのですが、このあたりの理由もイマイチわかりませんでした。
まとめ
6-23ヶ月のワクチン効果について, 3シーズンで評価していますが、2005/06は有効性を認めていました。
一方で、研究の方法に関していくつか疑問点があり、解釈は慎重に行なった方が良いでしょう。
- 6-23ヶ月のインフルエンザワクチンの有効性を3シーズンで評価
- 1シーズンのみ有効性が報告
- 研究上にいくつか問題がありそう