インフルエンザワクチンは日本の乳幼児で有効か、をテーマに6年間調査した研究を見つけたので、今回はこちらを紹介させていただければと思います。
インフルエンザワクチンの研究はRCTと症例対照研究が多いのですが、今回の研究はコホート研究で行われています。
- 6-23ヶ月を含む乳幼児で行われた日本の研究
- ほとんどの年でワクチンによる予防効果を認めている
- およそ70-80%程度と推定
研究の方法
国内のとある地方で行われたコホート研究です。対象となったのは、
- 6ヶ月〜6歳
- 2002-2007の冬シーズン
が該当しています。
ワクチンについて
ワクチンは、3価の不活化ワクチンが使用されています。接種量は今とは異なり、
年齢 | 量 |
6-11ヶ月 | 0.1 ml/回 |
1-6歳 | 0.2 ml/回 |
です。少なめの量ですね。
- 2回投与
- 1回投与
- なし
のいずれかに分けられています。。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、38度以上の発熱に対してインフルエンザを迅速検査で検出し、インフルエンザの発症率を計算し比較しています。
研究結果と考察
最終的に対象となった小児は7000人ほどでした。このうち、1歳未満は1200人ほど、1歳は2300人ほどでした。
ワクチン効果について:インフルエンザA
こちらが6ヶ月〜11ヶ月のインフルエンザAにおけるワクチン効果です。メタ解析風の図にしてみました:
いずれの年も有効性を認めており、ワクチンを接種することで、インフルエンザのリスクが80%ほど低下しています。
12〜23ヶ月におけるインフルエンザAをメタ解析風に提示すると、以下の通りです:
ほとんどの年で有効性が示唆されています。
ワクチンの有効性(VE)という指標に変換すると、以下の通りです:
6-11ヶ月 | 12-23ヶ月 | |
02/03 | 82% (24, 96) | 70% (44, 83) |
03/04 | 75% (32, 91) | 63% (42, 76) |
04/05 | 65% (2, 87) | 18% (-37, 52) |
05/06 | 78% (-59, 97) | 57% (22, 77) |
06/07 | 90% (-58, 99) | 88% (69, 95) |
07/08 | 88% (51, 97) | 71% (51, 83) |
インフルエンザB
インフルエンザBにおけるデータはこちらです。シーズンによって患者数が少なく、解析しなかった年もあるようですね。
6-11ヶ月 | 12-23ヶ月 | |
02/03 | 81% (21, 95) | 64% (26, 83) |
04/05 | 51% (-21, 80) | 53% (25, 70) |
感想と考察
6-11ヶ月のインフルエンザワクチン接種量は0.1mlと非常に少ない悪条件ですが、予防効果は一貫して認めていますね。
研究の問題点としては、交絡因子の対処が全くされていない点でしょう。多少、バイアスも入っているとは思いますが、これだけ大きな治療効果を打ち消すようなバイアスはそうそうないかと思います。気になるかたは、E-valueでも計算してみると良いでしょう。
まとめ
今回の日本のコホート研究では、2002-07年にかけて6-23ヶ月の乳幼児におけるインフルエンザワクチンの有効性を検討していますが、ほとんどの年で有効性が示唆されており、全体として70-80%ほどでした。
交絡因子が対処されておらず、多少はバイアス混じりの結果と思います。
- 6-23ヶ月を含む乳幼児で行われた日本の研究
- ほとんどの年でワクチンによる予防効果を認めている
- およそ70-80%程度と推定
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