冬のシーズンはインフルエンザが流行します。症状から区別するのは困難で、診断には迅速検査などが必用です。
今回、それぞれの感冒症状がインフルエンザをどのくらい予測するのかを検討した研究があったので、紹介させていただこうと思います。
- 症状からインフルエンザを予測できるか検討した研究
- 5-12歳に関しては、発熱+咳、のコンビで陽性的中率は80%ほど
- 1-4歳は症状から予測するのは困難
Ohmit SE, et al. Symptomatic Predictors of Influenza Virus Positivity in Children during the Influenza Season. CID.2006;43:564-8.
研究の方法
過去に行われたザナミビルとオセルタミビルのRCTで利用した二次データを使用した研究です。
対象となったのは、
- 5〜12歳:ザナミビル
- 1〜12歳:オセルタミビル
となっています。
インフルエンザはRCTで診断され、個々の症状は、
- 発熱 > 38.2
- 咳
- 咽頭痛
- 鼻の症状
- 筋肉痛
- 頭痛
- 倦怠感
- などを調べています。
研究結果と考察
5〜12歳のデータ
5〜12歳のデータを利用して、個々の症状がどのくらいインフルエンザを予測するのかみています。結果は以下の通りです:
症状 | OR (95%CI) |
発熱 | 2.67 (1.66-4.30) |
咳 | 5.19 (2.66-10.11) |
鼻の症状 | 1.63 (0.96-2.76) |
頭痛 | 1.16 (0.70-1.91) |
食欲低下 | 1.28 (0.73-2.24) |
咽頭痛 | 1.16 (0.70-1.91) |
筋肉痛 | 0.61 (0.38-0.99) |
倦怠感 | 0.67 (0.31-1.44) |
意外と筋肉痛や倦怠感があると、インフルエンザである可能性が低下しています。
1〜4歳のデータ
1〜4歳のデータは以下の通りです:
症状 | OR (95%CI) |
発熱 | 1.28 (0.32-1.88) |
咳 | 0.61 (0.11-3.42) |
鼻の症状 | 2.03 (0.65-6.31) |
頭痛 | 1.16 (0.62-2.57) |
食欲低下 | 1.11 (0.41-2.98) |
咽頭痛 | 0.97 (0.50-1.90) |
筋肉痛 | 2.32 (1.22-4.39) |
倦怠感 | 1.64 (0.31-8.68) |
1〜4歳は個々の症状をみてもORはそれほど高くなく、95%信頼区間が広いので、かなり不正確な検定ですね。筋肉痛のORがやや高いのが、5歳以上と比べると印象的です。
陽性的中率について
陽性的中率のデータは以下の通りでした:
年齢 |
5-12 | 1-4 |
熱 | 79% (75-83) |
65% (58-71) |
咳 | 77% (73-81) |
64% (58-71) |
熱+咳 | 83% (79-88) |
64% (58-71) |
筋肉痛 | 73% (66-81) |
|
熱+咳+筋肉痛 | 72% (64-81) |
発熱と咳に関しては、陽性的中率は83%ほどでした(5-12歳)
感想と考察
5〜12歳においては、咳+発熱が予測因子としてよさそうでしたが、臨床的にこの2つがあるからといって、インフルと診断をつけるのは難しそうですね。
1〜4歳に関しては、症状を把握するのが難しかったのか、やはり予測の精度は落ちています。
また、この解析にはcollinearityという統計学的な問題もあり、95%信頼区間が広くなっています。同じような解析をするなら、機械学習(CARTなど)を取り入れて予測したほうがよかったのかもしれないですね。
まとめ
今回の研究では、咳と発熱が5-12歳において、インフルエンザの予測因子として提案されていましたが、陽性的中率は80%ほどです。
1-4歳は症状から予測するのはかなり難しそうな印象です。
- 症状からインフルエンザを予測できるか検討した研究
- 5-12歳に関しては、発熱+咳、のコンビで陽性的中率は80%ほど
- 1-4歳は症状から予測するのは困難
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