インフルエンザの「特徴的」な症状というと、
- 高熱
- 関節痛・筋肉痛
などを思い浮かべる方が多いかもしれません。一方で、これらの症状があってもインフルエンザでないこともあります。反対に、インフルエンザでも典型的な症状が揃わないこともよくあります。
今回は、年齢によってインフルエンザの症状がどのくらい異なるかをみた研究を発見したので、ご紹介させていただければと思います。
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インフルエンザの症状を年齢別に比較
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低年齢のほうが高熱は多く、咳・鼻汁は8割以上で認めています。
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筋肉痛は10%前後と少ない
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3歳未満では20%ほどで中耳炎あり
Clinical Presentation of Influenza in Unselected Children Treated as Outpatients. Pediatr Infect Dis J 2009;28: 372–375
研究の方法
今回の研究はフィンランドで行われたコホート研究になります。対象となったのは、13歳未満の小児で、
- 2000-2002年のインフルエンザシーズン
- 13歳以下
- 発熱でクリニックを受診
などが該当しています。
インフルエンザはPCRで確定診断したうえで、初診時に
- 体温
- 鼻炎
- 咳
- 咽頭痛
- 頭痛
などの頻度をみています。
研究結果と考察
最終的に353名がPCRでインフルエンザ陽性と判断されています。
発熱に関して
体温を比較した表は以下の通りです:
体温 | < 3歳 n= 101 |
3〜6歳 n = 160 |
7歳〜 n = 92 |
> 37.5 | 98% | 93% | 95% |
> 38.0 | 94% | 91% | 84% |
> 39.0 | 59% | 51% | 39% |
> 40.0 | 20% | 12% | 4% |
38度以上の発熱のお子さんが多くを占めていますね。39-40度を超えるお子さんは、低年齢のほうが多い傾向にあります。
呼吸器症状について
症状 | < 3歳 n= 101 |
3〜6歳 n = 160 |
7歳〜 n = 92 |
鼻炎 | 86% | 75% | 73% |
咳 | 78% | 74% | 80% |
咽頭痛 | NA | 24% | 55% |
咳や鼻汁・くしゃみ、といった上気道症状はどの年齢層も8割前後で認めています。
頭痛・筋肉痛・消化器症状
インフルエンザというと頭痛、筋肉痛などを認めることがあります。
症状 | < 3歳 n= 101 |
3〜6歳 n = 160 |
7歳〜 n = 92 |
頭痛 | NA | 18% | 39% |
筋肉痛 | NA | 3% | 13% |
消化器 | 6% | 10% | 10% |
頭痛や筋肉痛は頻度としては必ずしも多くないようですね。
1割前後で消化器症状はあるようです。
身体所見について
所見 | < 3歳 n= 101 |
3〜6歳 n = 160 |
7〜13歳 n = 92 |
扁桃浸出液 | 1% | 3% | 4% |
全身状態不良 | 10% | 9% | 13% |
呼気性喘鳴 | 2% | 4% | 1% |
結膜炎 | 7% | 8% | 8% |
診察状に認められた所見ですが、発熱のせいか全身状態不良が10%ほど、結膜炎は7%ほどでした。喘鳴や扁桃腺の所見はあまりないようですね。
合併症
合併症 | < 3歳 n= 101 |
3〜6歳 n = 160 |
7歳〜 n = 92 |
急性中耳炎 | 19% | 11% | 1% |
肺炎 | 2% | 2% | 0% |
副鼻腔炎 | 0% | 3% | 2% |
3歳未満は中耳炎のリスクが2割弱ほどあるようですね。 肺炎や副鼻腔炎はすくないながらも、インフルエンザで起こすことが2%ほどであるのが分かります。
感想と考察
インフルエンザによる全体像を把握するのによい論文だと思いました。
高熱は低年齢のほうが多い一方で、咳・鼻の症状は8割ほどで認めています。
筋肉痛は学童では10%、幼児では3%と、それほど多くないのが分かります。
診察状は所見が乏しそうですが、3歳未満で約2割に中耳炎を認めており、鼓膜のチェックは必須ですね。
まとめ
今回の論文は、インフルエンザの症状を年齢別に比較しています。
低年齢のほうが高熱は多く、咳・鼻汁は8割以上で認めています。
筋肉痛は10%前後と少ないようです。3歳未満では20%ほどで中耳炎を認めていたようですね。
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インフルエンザの症状を年齢別に比較
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低年齢のほうが高熱は多く、咳・鼻汁は8割以上で認めています。
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筋肉痛は10%前後と少ない
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3歳未満では20%ほどで中耳炎あり