- RSウイルスの検査をしてください
- RSウイルスが気になって…
と外来で相談されることはよくあります。また、保育園などから「検査してきてください」といわれて渋々受診される保護者の方々もいます。
一方で、RSウイルスの迅速検査が完璧なものではない点は以前、こちらの記事で紹介しています:
感度はおよそ80%、つまり「本当はRSウイルスに感染しているけれども、検査で陰性となる人」の割合は20%ほどいることを意味します。
単なるかぜ症状の子供に、20%もの偽陰性の可能性がある検査をして「RSウイルスではない」ということに、あまり意義があるようには感じられません。
また、仮に「 RSウイルス陽性」だったとして、「じゃあ、どこまで隔離したらよいのか」「ウイルスを排泄しないのは、どのくらいなのか」という議論になると思います。
アフリカで行われた研究になってしまいますが、RSウイルスに感染したのちに、どのくらいウイルスを排泄しているかをみた研究がありますので、紹介します。
- RSウイルスの排泄期間をしらべた研究
- 排泄期間は中央値で11日
- 21日以上排泄している小児は、どの年齢層でもいた
Munywoki PK, et al. Influence of age, severity of infection, and co-infection on the duration of respiratory syncytial virus (RSV) shedding. Epidemiol. Infect. 2015;143:804-812
研究の方法
対象となったのは、ケニアの地方にすむ小児のいる家庭を対象に行われています。
- 週に2回、鼻腔スワブで鼻汁を採取
- PCRでウイルス検査
を実施しています。
- 年齢別の感染率
- 感染のインターバル
- ウイルスの排泄期間
などを見ています。
研究結果と考察
ウイルスの排泄期間
排泄期間 | 95%CI | |
最小 | 8.6 | 7.5-9.7 |
中央 | 11.2 | 10.1-12.3 |
最大 | 14 | 12.8-15.2 |
ウイルスの排泄期間ですが、中央値では11.2日となっています。
一方で、21日以上排泄していた小児が、1歳未満で10人、1-4歳で6人、5-17歳で8人いたようです。
感想と考察
RSウイルスに感染していると分かったとして、中央値で11日ほど排泄しているのがわかります。大半のおこさんは軽いかぜ症状であったと予測されます。
「RSに感染したのだから、感染の可能性がなくなるまで自宅待機」なんて極端な考え方があるのかもしれませんが、「単なる風邪症状のお子さんを、中央値で11日、最大で21日以上」も自宅待機させるのは困難なのではないでしょうか。
また、「RSウイルスの感染の可能性がなくなったかどうか判断」のため、医療機関に受診を、という考え方もあるようです。ですが、RSウイルス感染は小児でも大人でも「無症状」であることも結構あります。また、診察しただけでは「周囲に感染させないレベルか」なんて、普通わからないです。
この辺りに、医療者ができること・わかることと、保護者の望むこと、保育・幼稚園が要求すること、に大きな乖離がある印象です。
まとめ
RSウイルスに感染した場合、中央値にして11日ほどウイルスを排泄しており、21日以上排泄するケースもそれなりにあります。
- RSウイルスの排泄期間をしらべた研究
- 排泄期間は中央値で11日
- 21日以上排泄している小児は、どの年齢層でもいた
当ブログの注意点について