トイレトレーニングは、保護者であれば誰もが経験することで、色々と悩まれる方が多いでしょう。
現代では「子供中心」の考え方に基づいたトイレトレーニングが主流ですが、過去100年ほどを振り返ると、そうでもない時期があります。
今回は、トイレトレーニングの歴史を振り返ってみましょう。
- トイレトレーニングの歴史的な変遷の理解
- 1900年付近は、保護者中心のトイレトレーニング
- 1920年付近は、坐薬などを用いた強制的で厳格なトレーニング
- 1940年以降は、子供中心のトレーニングで、現代も引き継がれている
トイレトレーニングの背景
トイレトレーニングとは?
Toilet training is the acquisition of skills necessary for urinating and defecating in a toilet at a socially acceptable time and age.
トイレトレーニングとは「社会的に容認できる時間や年齢において、排尿・排便に必要な技術を身につけること」と考えられているようです。
大人からすると、トイレに行って排尿する・排便する、という単純な行為ですが、神経学的にはかなり複雑なプロセスです。例えば、脊髄反射によって排尿は1日20回ほど促されていると言われていますが、乳幼児の発達に従って、「膀胱に尿が溜まった」ことを感じ、「膀胱が充満した」と判断し、「排尿する」と行ったプロセスを認識する必要があります。
「トイレトレーニング完了」は存在しない
ちょっと衝撃的な小出しですが、「トイレトレーニング完了」という明確な定義はありません。つまり、何時間排尿を我慢できたら、排便を我慢できたら、「トイレトレーニングに成功し、完了した」と明確に言える定義はありません。
トイレトレーニング完了の定義は、過去に行われた研究によって異なりますし、日常生活においては時代、国や文化など、社会的な背景によって異なります。例えば、西洋式の文化でのトイレトレーニング完了とは、
- 尿や便の「お漏らし」がない
- 社会的に寛容できる場所で排泄できる
- 適切な姿勢で排泄できる
- 衛生的な方法で排泄できる
など、排泄行為だけでなく、社会的・文化的要素も考慮されています。
この定義は途上国などでは通用しないですし、論文を読む際には、このような背景を気にする必要がありそうです。
トイレトレーニングの歴史
北米でのトイレトレーニングの歴史を見てみましょう。3つの大きな波があったようで、1900年前後、1920年前後、1940年前後でトレンドが変わっている印象です。
1900年前後
最初の流派では、トイレトレトレーニングは「受動的で寛容的なプロセス」と考えられて、開始のタイミングなど主に親が主導で行ってきました。
1920年前後
2番目の流派は、1920-30年代に生じたもので、行動科学の研究者らは、トイレトレーニングとは「厳格に習慣をトレーニングするプロセス(rigid habit-training)」であり、親が主導で行うべきものという考え方が主流でした。
トイレトレーニングの目的は「乳児の排泄の負担を迅速に軽減すること」という考えが主流だったようです。このため、1932年、アメリカ政府は「Infant Care」を発表し、「トイレトレーニングは生後六か月から八か月までに完了すること」と提案していたようです。
このためは、今ではちょっと考えられない方法ですが「soap stick」という排便を促す坐薬を使用して、定期的に強制的に排泄させる方法が推奨されていました。これによって、排便の規則性が確立できると考えられていたようです。
1940年〜
3番目の流派は1940年前後から「トイレトレーニングの主体は子供」という考えが主流になってきました。
1940年代までに行われた厳格なトイレ訓練では、
- 腸および膀胱の自制を達成できない
- 行動上の問題を誘発する可能性がある
という仮説が立てられるようになりました。
さらに、過去の研究によると、小児は「生後約9ヵ月までは随意的な膀胱および腸のコントロールが発達しない」という結果も出ていたようです。つまり、「自分の意志で排泄できない時期に、坐薬などで無理に排便させても、排泄のトレーニングにならない、自律性を促せない」と行った問題点がトピックされるようになってきました。
この頃から、トイレトレーニングは子ども中心のアプローチに戻っています。
つまり、子どもがトイレトレーニングに興味を示したら、親はトイレトレーニングを始めるようにアドバイスされ始めました。
1962年、Brazelton先生は「子どもの準備」アプローチを開発しています。さらに、行動エンドポイントを中心に行う、トレーニングに焦点を当てたAzrin and Foxx法が行われるようになり、現在でもこの方法は有名です。
トイレトレーニングが親主導型から子ども主導型に移行するにつれて、トイレトレーニングを開始する年齢が遅くなる傾向になってきたようです。
感想
トイレトレーニングにも長い歴史があるようで、面白いですね。最初は親が中心のトイトレに始まり、途中で坐薬を用いた厳格な管理、そして最終的に子供に重心を置いたトレーニング方法になっています。
個々の内容はさらっと流してしまいましたが、どこかで深掘りしてみたいですね。
まとめ
保護者中心 | 厳格な管理 | 子供中心 | |
1890 | 100% | 0% | 0% |
1900 | 78% | 22% | 0% |
1910 | 23% | 77% | 0% |
1920 | 0% | 100% | 0% |
1930 | 0% | 75% | 25% |
1940 | 0% | 33% | 66% |
1948 | 0% | 0% | 100% |
トイレトレーニングの歴史について今回は説明してみました。
1900年前後は保護者中心、1920年前後に厳格な管理方法の推奨、1940-50年くらいから子供中心のトレーニングへと変わってきています。
それぞれの変化には、トイレトレーニングに対する、その時代の考え方が大きく変わるタイミングがあったようです。
- トイレトレーニングの歴史的な変遷の理解
- 1900年付近は、保護者中心のトイレトレーニング
- 1920年付近は、坐薬などを用いた強制的で厳格なトレーニング
- 1940年以降は、子供中心のトレーニングで、現代も引き継がれている