トイレトレーニング(トイトレ)に影響する因子は複数あります。もちろん、トイトレ自体は個人個人で異なるようにアレンジされるべきですが、上手くいく・いかないにも、一定の傾向があるようです。
今回は、これらの要素について説明できればと思います。年齢、性別、便秘について述べていきます。
- トイレトレーニングの開始時期は、生後18ヶ月以降に
- 女児の方が早く完了する傾向があります
- トイトレ前に、便秘の治療はしておきましょう
トイトレに影響する因子
性別
トイトレの準備を開始する時期は、女児と男児では同じ年齢のことが多いです。一方で、女児は男児より早くトイレトレーニングを開始し完了する傾向にあるようです。
例えば、Schumらは267人の小児を調査し、女児と男児が同様の順序でトイレ技能を習得したことが分かりました。
しかし、女児の方が、より早くトイトレの技術を習得していたようです。
理由はいくつか考えられているようです。
例えば、女児の方が社会的で、親を喜ばせたいという願望が強いため、トイトレをより早く達成するという仮説があるようです。
また、乳幼児期は、女児は男児よりも成熟しており、高度な語学力やトイトレを学ぶのに有利とも考えられています。
さらに、男児は排尿と排便で、別の姿勢をとるため、これがトイトレ完了の障壁になっているかもしれないと著者らは考えています。
開始年齢
「トイトレを何歳から始めるべき?」と悩まれている親も多いかもしれません。
18〜24ヶ月以降に開始することが多いですが、トイトレを成功させるためには、お子さんがトイトレの準備が整っているのか、適切に評価することも重要です。
トイトレのタイミングが早くなったり遅れたりして、問題が生じることがあルカらです。
この30~60年の間に、トイトレの開始・完了する平均年齢は上昇しています。
Schumらは文献レビューを行い(1)、1990年代後半にトイトレを受けた小児は、1950年代にトレーニングを受けた小児より、排便および排尿コントロールが約12~15ヵ月遅れて達成されたとを明らかにしています。
年代 | 1950 | 1990 |
達成 (平均) | 24ヶ月 | 36〜39ヶ月 |
理由は色々と考えられており、
- 「完了」の定義の違い
- 小児の生理学的発達に対する理解が深まった
- 紙おむつへの依存度が高まっている
- 子ども中心のアプローチが推進されている
などが挙げられます。
確かに、トイトレの遅れは、保育施設間の便の接触による感染症の拡大のリスクもあります。また、幼稚園に近づくにつれて家族のストレスが増加するかもしれません。
多くの学術団体の見解では、トイトレを始める前、少なくとも生後18カ月になることが推奨されています。
一方で、Schumらは、トイレトレーニング準備技能は子供の2歳の誕生日後まで得られないことを示唆している (1)
彼らは、267人の子どものうち、女子は24カ月までに11のトイレ準備技能のうち2つしか習得しておらず、男子は二歳の誕生日を迎えるまで11の技能のいずれにも習熟していなかったと述べています。
トイレトレーニングを開始する年齢の中央値は女児で25.5カ月、男児で30.5カ月であった。
これらのデータをもとに、トイレトレーニングは生後22カ月から30カ月の間に始めることを推奨しています (2)
Blumらは、小児378人のコホートで、トイトレが平均36.8ヶ月(95%信頼区間, 22〜54カ月)で完了したことを明らかにしています。(3)
また、トイトレ開始の平均年齢が遅い小児は、トイトレ完了が遅れる傾向(42カ月以上)にあるようです。トイトレ開始が遅れてしまった理由も多種多様で、18ヶ月時点での言語発達の遅れ、便秘、トイトレの拒否などがあるようです。
同じ小児を調査した別の報告で、Blumらは、すなわち生後18カ月から26カ月の小児にトイトレをすると、トイトレの期間が長くなる傾向があると結論づけています。その一方で、早期にトイトレをすることで、有害事象(便秘、排便拒否、便の我慢など)は認められなかったようです。(4)
便秘
乳幼児における便秘の有病率は0.3〜28%と報告されており、かなりばらつきがあります。
Loening-Bauckeらの報告によると、4157人の2歳児において、便秘の有病率は4.5%でした。1歳までの有病率は2.9%、1〜2歳では10.1%とも報告しています。
〜1歳 | 1〜2歳 | |
便秘 | 2.9% | 10.1% |
便秘になると排便時に痛みが生じることがあり、トイトレを嫌がる理由の1つになり得ます。
硬い便の場合、裂肛(肛門の一部が切れる)を起こすこともあり、子供は痛みを感じます。
裂孔の再発を恐れる子供は、恐怖心により、トイトレを試したがらなくなり、おむつやズボンをはいたまま便を出し続けます。
便秘の徴候と症状には、排便回数の減少(1週間に排便が3回以下であることが一般的に異常である)、便の硬さ、痛みの存在、便の停滞、排便時の出血などがあります。
便秘に関しては、こちらで4回に分けて詳しく説明しています:
感想と考察
トイトレを開始する際に気にすべき要因のメジャーどころをざっくりと説明してきました。
トイトレには男女差がありますし、開始が早すぎるのも問題です。また、便秘がある場合は、トイトレを開始する前に、治療しておいた方が良いでしょう。
まとめ
今回はトイトレに影響する要因についてメジャーどころを解説しました。
トイトレは18〜24ヶ月以降で開始し、完了時期には性差があります。
トイトレ開始前には、便秘は治療しておいた方が良いでしょう。
- トイレトレーニングの開始時期は、生後18ヶ月以降に
- 女児の方が早く完了する傾向があります
- トイトレ前に、便秘の治療はしておきましょう
参考文献
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- Schum TR, Kolb TM, McAuliffe TL. et al. Sequential acquisition of toilet-training skills: a descriptive study of sex and age differences in normal children. Pediatrics. 2002;109(3):48–54. [PubMed]
-
- Schum TR, McAuliffe TL, Simms MD. et al. Factors associated with toilet training in the 1990s. Ambul Pediatr. 2001;1(2):79–86. [PubMed]
-
- Blum NJ, Taubman B, Nemeth N. Why is toilet training occurring at older ages? A study of factors associated with later training. J Pediatr. 2004;145(1):107–11. [PubMed]
-
- Blum NJ, Taubman B, Nemeth N. Relationship between age at initiation of toilet training and duration of training: a prospective study. Pediatrics. 2003;111(4 Pt 1):810–4. [PubMed]
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