- 下痢の時の食事は控えめに
- しばらくは水分のみで
などなど、下痢の時に食事を制限したがる医師もいるようです。あるいは、ホームケアとして色々と伝え聞いているかもしれないですね。
下痢の時も特別な食事制限は必要ないというのが、現在では一般的に考えられている事ですが(注:とはいえ、あまりに脂っぽいものは避けた方が良いと思います)、その根拠はどこから来ているのでしょうか。
今回は、エネルギー制限をしたり、食事を制限する事が、下痢の期間に影響するかを見た研究結果を紹介します。
- 胃腸炎で入院した乳幼児に飲食・エネルギー摂取量の制限は有効かを検討したRCT
- 制限をしても、メリットは最初の数日の下痢が少なくなるくらい
- 制限をした場合、元の体重に戻る期間が遅くなるデメリットがある
研究の概要
今回は1982-85年にペルーで行われた研究です。
対象となったのは、3〜36ヶ月の乳幼児(男児)で、下痢がで初めて60時間以内の小児が対象です。
治療について
下痢に対して食事・水分摂取をどうしたかですが、以下の4つのパターンに分けて、ランダム化を行っています。
グループ | 脱水補正 | 0〜48h | 48〜96h | 96〜144h |
1 | ORS | 110 | 110 | 110 |
2 | ORS | 55 | 110 | 110 |
3 | ORS | OR | 55 | 110 |
4 | IV | IV | 55 | 110 |
(ORS, 経口補水液; IV, 点滴; 数字は XX kcal/kg/day)
食事に関しては乳糖フリーのものを与えていたようです。
結果
結果は以下の通りでした
下痢の量
- 点滴をした場合、最初の2日は下痢の量は少なかった
- 3日目以降は排便の量は変わらない
エネルギー摂取量と体重
- 点滴をした場合、エネルギー摂取量は低い
- 体重の戻りは、食事制限をしない方が早い
- エネルギー摂取量を制限した方が、体重の回復は遅い傾向
感想と考察
「胃腸炎で腸が荒れているから、休ませて」という考え方で、胃腸炎に罹患して入院になった場合、食事を制限することもあるようです。確かに、嘔吐で食べれない・飲めないようであれば、それは仕方ないかと思いますが、飲食がある程度できるお子さんを、闇雲に食事制限するのはどうかと個人的には考えています。
今回の研究に関しては、点滴で絶食にすることで確かに下痢の量は減っていますが、体重増加の戻りはかえって遅くなっています。小児の場合、基本的には末梢(手や足)に点滴をとりますが、ここから入れられる点滴の組成では、十分なエネルギー摂取ができないからです。
また、エネルギーを制限しても、あまり意味がなさそう、むしろ、こちらも体重を戻すのにかえって時間がかかってしまうかもしれません。
この論文にもlimitationがいくつかあります。入院患者の多くは細菌性胃腸炎でした。特に大腸菌が多かったようです。現代の先進国ではウイルス性が大半で、その状況に一般化して良いかは少々疑問があります。
あと、食事に関しては乳糖をあえて全例で制限しています。エネルギー制限はしなくても良いかもしれない結果でしたが、乳糖の制限はどうすべきかは、別の研究を参照しなければいけないでしょう。
まとめ
今回の研究では、胃腸炎で入院した小児において、飲食やエネルギー摂取量の制限をすべきかを検討したRCTです。
飲食やエネルギー摂取の制限をしてもメリットは限定的で、むしろ元の体重に戻る時間が長くなるデメリットがありそうです。
- 胃腸炎で入院した乳幼児に飲食・エネルギー摂取量の制限は有効かを検討したRCT
- 制限をしても、メリットは最初の数日の下痢が少なくなるくらい
- 制限をした場合、元の体重に戻る期間が遅くなるデメリットがある
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