下痢の時の食事・水分に関してですが、様々な選択肢があり、どれを指導するかは医療者によっても異なる印象です。例えば、
- まずは水分のみで
- 水分と、消化の良いお粥にしましょう
- 食べれるなら、特別な制限はいらないでしょう
など、少し思いついただけでも、バリエーションが豊富です。
私個人の考えになりますが、基本的に小児の下痢で、飲食ができる状況であれば、無理して食事制限をする必要はないと考えています。
少しテーマが絞られてしまいますが、「水分のみ vs. 水分 + お粥」で検討した研究があるようなので、今回はこちらを紹介します。
- 下痢の時に水分のみにすべきか、お粥を付け足すべきかを議論した論文
- お粥を食べさせると、やや下痢の量は増えるが、体重はかえって増加する
- 飲食可能なら、水分のみに制限する必要はなさそう
研究の概要
今回の研究は、コレラの感染して水様便が出て48時間以内の2−5歳の小児を対象に研究が行われました。
治療について
治療は、
- 経口補水液のみ
- 経口補水液 + お粥 (55 kcal/kg/day; 150 gのお粥を4回)
のいずれかをランダムに投与しています。
結果について
最終的には、経口補水液のみが24人、お粥を足したのは24人の48人が研究対象です。
お粥を開始するデメリットとして、
- 下痢の量が増える
- 下痢の期間が長くなる
- 下痢の回数が増える
傾向にあったようです。下痢の量のデータに関しては以下の通りでした:
お粥 | なし | あり |
下痢の量 | 870.6ml (152.3) |
1447.5ml (214.4) |
一方で、お粥を食べていたグループの方が、
- 水分の吸収量が176ml 多かった
- 体重増加が良好であった
という傾向にあったようです。
感想と考察
今回の論文に関しては、下痢の時に水分のみにすべきか、水分にお粥を足すべきかを議論しています。
ややトリッキーですが、お粥を追加すると下痢の量は増えますが、補水液のみに比べて体重増加が良いので、やはり食べれる状況であれば、食べさせた方が良いのでしょう。
この研究はミャンマーにおいて、コレラに感染した小児という点で、一般化にやや懸念があります。先進国で胃腸炎といえば、ウイルス性が大半を占めます。
まとめ
今回の研究は、ミャンマーの小児の胃腸炎において、水分のみで経過を見るか、水分にお粥を足すべきかをRCTで検討しています。
お粥を追加すると下痢の量は多少増えるようですが、体重の回復がよかったです。
飲食できる状況であれば、無理に水分のみに制限しないほうが良いでしょう。
- 下痢の時に水分のみにすべきか、お粥を付け足すべきかを議論した論文
- お粥を食べさせると、やや下痢の量は増えるが、体重はかえって増加する
- 飲食可能なら、水分のみに制限する必要はなさそう
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