- 下痢になったら、腸を休ませて
などと外来で指導している医療者もいるようです。確かに、胃腸炎の場合、腸の粘膜が荒れてしまうため、吸収が悪くなるため、無理に食事を食べさせると、かえって下痢が長引くのではないか、という懸念から、この指導が来ているのだと思います。
一見するとまともな発言のようにもみえますが、本当に食事をやめて水分摂取だけにし、「腸を休ませる」意味があるのかは、実際に研究してみないとわかりません。
今回は、下痢で受診した初日から食事を摂取すべきか、1日くらい食事を延期するべきかを検討した研究を紹介します。
- 欧州で行われたRCT
- 下痢の時に、食事を一時的にやめるべきか検討
- 食事をやめると、体重の回復が遅れる
- 下痢の回数や、嘔吐の回数はほとんど変わらない
研究の概要
今回の研究は、ヨーロッパにある12の病院で行われた多施設合同ランダム化比較試験になります。
対象となったのは、3歳未満の小児で、下痢は1〜5日間、1日4回以上の下痢があるケースです。
治療
治療は、
- これまで通りの食事を続ける
- 20時間は経口補水液を使用し、その後に食事を再開する
のいずれかをランダムに投与しています。
経口補水液は、下痢がでるたびに体重あたり10ml/kgを投与するように指示しています。
結果
結果は以下の通りでした:
食事の再開を遅らせると
- 体重の戻りが遅くなる(100 gほど)
- 嘔吐の回数は減らない
- 下痢の回数も減らない
でした。
感想と考察
「下痢の時は、腸を休めましょう」と指導している医療者も時々いるようです。しかし、その根拠はかなり不確かといえそうです。
今回の研究は、患者数はそれほど多くはありませんが、欧州の多施設で行われており、一般化可能性はそれなりに高いと考えています。
まとめ
今回の研究は、欧州で行われたランダム化比較試験で、下痢の時に食事再開を遅らせることの意味を検討しています。
結果として、食事再開を遅らせても、下痢の回数は減らず、体重の回復が遅れる傾向にあります。
下痢があっても、飲食できる状況であれば、無理に制限することはないでしょう。
- 欧州で行われたRCT
- 下痢の時に、食事を一時的にやめるべきか検討
- 食事をやめると、体重の回復が遅れる
- 下痢の回数や、嘔吐の回数はほとんど変わらない
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