- 下痢の時、食事やミルクはどうしたらよいですか?
は、小児か外来でよくある質問です。基本的には、急性胃腸炎による下痢であれば、食事やミルクの再開は、特別に延期しなくてもよいと考えられています。その根拠を、本日はご紹介させていただこうと思います。
- 乳児を対象とした研究
- 胃腸炎の下痢のとき、ミルクや母乳の再開タイミングを検討
- 飲める状況なら、特別に遅らせる必要はなさそう
Gazala E, et al. Early vs late refeeding in acute infantile diarrhea. Isr J Med Sci. 1988;24:175-9.
小児の下痢のときに
- ミルクを薄めてください
- 腸をやすめてくださ
といった指示もあるようです。ですが、これらの指示はほとんどが科学的根拠がありません。
飲食可能である状況なら、食事や飲み物に特別な変更は必要ないと考えています。
研究の概要
今回は、イスラエルで行われたランダム化比較試験(RCT)をご紹介します。
対象患者
今回のRCTは90人を対象に行われました。対象となったのは、
- 1〜12ヶ月
- 下痢 < 4日
- 下痢の回数 > 4/日
- 軽度の脱水
のある乳児が対象です。
治療
治療は、経口補水液による経口補水療法を行ったのちに、ランダムに
- 6時間以内に母乳 and/or 人工乳を再開
- 24時間以降に母乳 and/or 人工乳を再開
で行い、下痢の期間を比較しています。
研究結果
結果は以下の通りでした:
再開 | 早期 | 遅い |
N | 37 | 26 |
期間, 時間 (SD) |
88.8 (45.6) |
86.4 (57.8) |
脱水が軽度で、飲める状況であれば、ミルクや母乳の再開を遅らせる必要はなさそうですね。
感想と考察
今回の研究結果では、乳児が対象ですが、胃腸炎による下痢のときに、特別、ミルクや母乳の再開を遅らせる必要はなさそうです。
時に、「ミルクを薄めてください」といった指示をしている医師もいるようですが、過去のデータをみるかぎり、あまりメリットはなく、むしろ下痢によって低下した体重の回復が遅れるという報告もあります。
まとめ
今回は、乳児を対象に行われたRCTで、下痢のときに母乳や人工乳を遅らせるべきか、検討しています。
乳児が飲める状況であれば、母乳や人工乳を中断する必要はなさそうですし、遅らせたからといって下痢の期間が短くなるわけではなさそうです。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/23 01:09:35時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について