- 下痢の時、ミルク・乳製品を避けましょう
という指導もあるようです。
ミルク(人工乳)や乳成分は脂質やタンパク質の割合が高く、腸に負担になるという考えがあるようです。腸への負担を和らげようという考えのもと、このような指導がされていることもあるようです。
一方で、ミルクや乳製品を避けることにメリットがあるのか、きちんと評価する必要があるでしょう。
今回は、この点を触れた論文の解説をしようと思います。
- 乳幼児の下痢のとき、牛乳を含むミルクを避けるべきか検討した研究
- 米、レンズ豆、ココナッツオイルからできた調乳を使用するメリットはなさそう
- 下痢の期間は増え、体重増加には不利であった
近年の報告をみると、下痢の時に、ミルクを薄めたり、乳製品を避ける必要はないと考えられています。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、牛乳からできた人工乳と、それを避けた調乳を比較・検討した研究になります。
インドで、1986年に行われたランダム化比較試験(RCT)になります。
対象患者
対象となったのは、
- 2歳未満
- 軽症の胃腸炎
- 軽度の脱水(< 5%)
が対象です。
治療
治療は、脱水の補正を行なった後に
- 牛乳を含まない調乳
- 通常のミルク(Lactogen®︎)
をランダムにわりつけています。
「牛乳を含まない調乳」は、米、豆類(lentil)、砂糖、ココナッツオイルから精製されたミルクのようです。
研究結果
結果は以下の通りでした
1. 下痢の期間
下痢頻度は、初日は
- 牛乳を除去したミルク:11日(SD, 10.0)
- 通常のミルク: 7.6日(SD, 10.8)
でした。
通常のミルクのほうが、むしろ下痢の期間は短いですね。
2. 体重について
体重の変化ですが
- 牛乳を除去したミルク:2.0 g/kg/24h(SD, 4.2)
- 通常のミルク: 5.8 g/kg/24h(SD, 7.8)
通常のミルクのほうが、体重増加には有利なデータです。
3. エネルギー摂取量について
- 牛乳を除去したミルク:78.7 kcal/kg/日(SD, 31.7)
- 通常のミルク: 101.3 kcal/kg/日(SD, 41.1)
でした。ほとんど差はなさそうですね。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、あえて牛乳の成分避ける必要はなさそうな印象ですね。
むしろ、牛乳を避けた調乳にすると、下痢の期間、体重回復などの点から不利になりそうな印象です。
まとめ
今回は、乳児の下痢に対して、牛乳の成分のあるミルクを避けるべきかを検討しています。
牛乳の成分のないミルクにすると、むしろ、下痢の期間が延長し、体重の回復が遅れる傾向にありました。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/23 01:09:35時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について