- 下痢の時、ミルクを薄めてください
という指導もよくあるようです。
ミルクを薄めることで、腸への負担を減らすのが目的のようです。
ただ、この方針を推奨する科学的根拠は乏しく、むしろデメリットがあります。
例えば、ミルクを薄めることで適切なエネルギー量が摂取できず、体重の回復が遅れるという結果は複数あります。
今回は、この点を触れた論文の解説をしようと思います。
-
乳児の下痢に対して、ミルクを薄めるべきかを検討
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ミルクを薄めても、下痢の期間は短縮せず、むしろ体重の回復が遅れる傾向にある
近年の報告やガイドラインをみると、下痢の時に、ミルクを薄めるなど、特別な変更は必要はないと考えられています。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、ミルクを薄めるべきか検討した研究になります。
ブラジルやグアテマラで、1989-91年に行われたランダム化比較試験(RCT)になります。
対象患者
対象となったのは、
- 生後2〜6ヶ月
- 120時間以内の胃腸炎
- 軽度の脱水
の患者が対象です。
治療
治療は、脱水の補正を行なった後に
- 通常のミルク (100%)
- 1/2に薄めたミルク (50%)
をランダムにわりつけています。
研究結果
結果は以下の通りでした
1. 治療の失敗率
治療の失敗は
- 脱水の再発
- 下痢の増加
と定義し、以下の通りでした。
ミルク | 薄めない N = 335 |
薄めた N = 338 |
治療失敗率 | 19% | 20% |
治療失敗率は2グループで変わりませんでした。
2. 下痢の期間
下痢の期間(平均)ですが、以下の通りでした。
ミルク | 薄めない N = 335 |
薄めた N = 338 |
下痢の期間 | 92時間 (50) |
92時間 (44) |
下痢の期間はほとんど変わらないので、ミルクを薄めるメリットはなさそうです。
3. 体重の回復
体重の回復(平均)ですが、以下の通りでした。
ミルク | 薄めない N = 335 |
薄めた N = 338 |
回復, kg (%) |
+0.8 kg (4.7%) |
+ 0.3 kg (4.4%) |
ミルクを薄めない方が、体重の回復には有利ですね。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、あえてミルクを薄める必要はなさそうな印象ですね。
ミルクを薄めても、下痢の期間は短くならず、体重の回復が遅れる傾向にあります。
まとめ
今回は、乳児の下痢に対して、ミルクを薄めるべきかを検討しています。
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、あえてミルクを薄める必要はなさそうな印象ですね。
ミルクを薄めても、下痢の期間は短縮せず、むしろ体重の回復が遅れる傾向にあります。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
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