- 下痢の時、ミルクを薄めるように
という指導もよくあるようです。
急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、炭水化物の吸収が悪くなることが知られています。このため、1980年代くらいまでは、「ミルクを薄めるように」といった指導がよくされていたようです。
理論上、正しそうにみえても、実臨床ではその理論に結果が伴わないことはよくあります。
今回は、この方法にメリットがあるのかを触れた論文の解説をしようと思います。
- 小児の下痢の時、ミルクを薄める必要があるか検討した研究
- ミルクを薄めると、体重の回復が遅れ、入院期間がやや長い
乳糖を避けるべきかは、様々な研究で検討されており、今回説明した研究のみでなく、他の研究もみて、総合的な判断が必要と考えています。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、ミルクを薄めるべきか検討した研究になります。
オーストラリアで、1981年に報告されたランダム化比較試験になります。
対象患者
対象となったのは、
- 6ヶ月以上の乳児
- 胃腸炎で入院
- 下痢の期間は受診時に7日以内
の患者が対象です。
治療
治療は、点滴による脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。
- ミルクを薄めて再開
- 普通のミルクを再開
となります。
研究結果
それぞれのグループに31人 vs. 28人ずつが参加しています。
結果は以下の通りでした
1. 下痢の期間
下痢の期間は、以下の通りでした。
グループ | 下痢の期間 平均(範囲) |
1. 薄めたミルク | 2.0日 (1-5) |
2. 普通のミルク | 2.3日 (1-5) |
ミルクを薄めても、下痢の期間はほとんど変わらないです。
2. 嘔吐の期間
嘔吐の日数は以下の通りでした:
グループ | 下痢の期間 平均(範囲) |
1. 薄めたミルク | 1.7日 (1-4) |
2. 普通のミルク | 2.4日 (1-6) |
薄めたミルクの方が、嘔吐の期間はやや短い印象ですね。
3. 入院日数について
入院日数を比較しています:
グループ | 下痢の期間 平均(SD) |
1. 薄めたミルク | 5.4日 (3-9) |
2. 普通のミルク | 4.7日 (3-7) |
入院期間は、薄めたミルクのグループのほうが長い傾向です。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、ミルクを薄めても、あまりメリットがなさそうにみえます。
類似のRCTの研究でも、類似の結果があるようで、おそらくミルクを薄める必要はない気がします。
まとめ
今回は、乳児の下痢に対して、ミルクを薄めるべきかを検討しています。
ミルクを薄めても、下痢の期間や入院日数は改善しない傾向にありました。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
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