新型コロナウイルス

新型コロナウイルスに感染した妊婦と新生児の症例集積 [IgGとIgM抗体] 3/30版

今回は、新型コロナウイルスに感染した妊婦・新生児の症例集積を紹介させていただきます。

以前、ランセットに掲載された新生児・母親の9ペアの症例集積の続編のようです。

今回は、この新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した妊婦から出生した新生児の9例のうち6例の血清を利用した症例集積になります。

IgG抗体 = 胎盤を通過する
IgM抗体 = 胎盤を通過しない
という性質を知っておくと良いでしょう。IgMは分子量が大きいので、胎盤を通過しないと考えられています。


(図はこちらより拝借)

 

ポイント

  •  新型コロナウイルス陽性の妊婦から生まれた新生児6例の追加調査
  •  臍帯血、母乳、羊水、新生児の咽頭からはPCR陰性
  •  新生児のIgMとIgGが高値であった
  •  垂直感染が示唆されるが、疑問点もあり、さらなる調査が必要
マミー
マミー
妊婦が新型コロナウイルスに感染すると、新生児にも感染しましか?

Dr.KID
Dr.KID
新しい報告が出たので、一緒に確認してみましょう。

  妊婦の感染例の症例集積について

新しい妊婦・新生児の感染例の症例集積を簡単にまとめようと思います。

 概要

新型コロナウイルスに感染した妊婦から出生した9例の新生児のうち、6例において、新型コロナウイルスのIgM、IgG抗体を母と新生児から採取。IgMとIgG抗体は、メーカー側の感度。特異度は以下の通りであったとのこと:

  IgM IgG
感度 88.2% 97.8%
特異度 99.0% 97.9%

それぞれの抗体は、出生時に母と新生児の血液から採取。

もともと、上述の6例はPCR検査がされており、新生児は臍帯血、羊水、母乳、咽頭の検査では全て陰性であった。

結果

抗体検査の結果は以下の通りでした:

IgM

症例 新生児 母親
1 39.6 83.97
2 16.25 236.6
3 3.79 5.58
4 1.9 33.26
5 0.96 15.61
6 0.16 1.39

(> 10がカットオフ)

症例1と2のIgMが高価となっています。

IgMは胎盤を通過しない性質があるので、新生児が自ら産生したことになります。

IgG

IgGは以下の通りでした:

  新生児 母親
1 125.5 136.72
2 113.91 117.37
3 75.49 120.63
4 73.19 103.46
5 51.38 70.05
6 7.25 8.12

IgGは胎盤を通過します。母のIgGが高いほど、子供のIgGも高い傾向にありますね。

 感想と考察

出生時に採取されたIgMが上昇しているのを見ると、垂直感染の可能性が示唆されます。
ただ、臍帯血・羊水のPCRは陰性であり、確証が持てるわけではなさそうです。

著者らも垂直感染以外にも、胎盤の損傷の可能性を指摘しています。IgMが高かった新生児の母の胎盤は、重さや病理的な所見でも損傷が見られており、これで本来は通過しないはずのIgMが通過してしまった可能性もあるようです。

いずれにしても、もう少し規模の大きなデータが必要そうです。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が騒動になって1ヶ月以上になりますが、小児に関しては、徐々に情報が増えてきた印象です。現時点で分かっていることをまとめると、以下の通りです:

Dr.KID
Dr.KID
これまでに私が検索した報告例のまとめです。

まとめ

今回は、

  •  新型コロナウイルスに感染した妊婦と新生児9例

についてアップデートさせていただきました。

引き続き、新しい情報、過去の文献を読み込んだら、報告させてもらおうと思います。

 

 

新刊(医学書):小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

 

noteもやってます

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。