- 下痢の時、乳糖を避けたほうがよいのか?
という話題はありますが、過去の個々の研究をみても、この方針は専門家でも議論が分かれているようです。
急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、吸収が悪くなることが知られています。このため、乳糖を避けた方が吸収に良いのではないか、と必要性を感じる医療者がいるようです。
1980-1990年代にかけて、積極的に研究がなされていたようです。
今回は、この方針に科学的根拠があるか検討した論文を解説してみようと思います。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 乳児が下痢の時、乳糖を避けたほうがよいか検討
- 乳糖を避けると、下痢の期間はやや短くなるかも
- 下痢の期間と乳糖の摂取量には、用量・反応関係があるかもしれない
胃腸炎のとき、乳糖を避けるべきかは複数の研究が行われていて、意見が分かれています。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、乳糖を避けたほうがよいか検討した研究になります。
1994年にオーストラリアから報告されたランダム化比較試験になります。
対象患者
対象となったのは、
- 胃腸炎で入院
- 1〜24ヶ月
- 5日以内の下痢
乳児が対象です。
治療
治療は、脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。
- 通常のミルク
- 乳糖が少ないミルク
- 乳糖を全く含まないミルク
のいずれかをランダムに割り当てています。
乳糖を全く含まないミルクの例として、ノンラクトがあります(推奨ではありません):
研究結果
結果は以下の通りでした:
乳糖 | なし | 少しあり | 普通の ミルク |
N | 23 | 24 | 23 |
下痢期間 | 25時間 (0-152) |
29時間 (10-103) |
38時間 (13-142) |
摂取量 ml/kg/day |
73 | 79 | 75 |
乳糖を含んでいるほど、少し下痢の期間は長くなっているようですね。
一方で、エネルギー摂取量はあまり変わらないですね。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、乳糖を少なくすると、下痢の期間は短くなる印象です。エネルギー摂取量には、あまり変化がなさそうですね。
まとめ
今回は、1994年にオーストラリアから報告された、乳児の下痢と乳糖に関連した研究です。
乳糖を避けることで、下痢の期間はやや短くなっています。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について