- 鼻水が緑色 or 黄色になってきました
というご相談は外来でよく受ける相談の1つです。
鼻水の色が変化するのは、小児のかぜでは自然の経過なのですが、体調の変化は気になるところでしょう。
一方で、「鼻水が緑色 or 黄色 = 細菌感染」と考える一般の方々も一定数いる印象で、「鼻水が緑色 or 黄色だから抗生剤を処方してほしい」という相談を受けることもあります。
今回は、緑色 or 黄色の鼻水があった場合、どのくらい抗生剤の希望が上昇するか検討した研究を紹介してみましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 鼻水の色が変化した場合に抗菌薬の処方希望が変化するか検討
- 鼻汁の色が変わった場合、抗菌薬の処方希望が18%上昇
- 学歴の高い人ほど、緑色 or 黄色鼻汁に対し、抗菌薬を欲しがる傾向にある
Mainous AG 3rd, et al. Patient knowledge of upper respiratory infections: implications for antibiotic expectations and unnecessary utilization. J Fam Pract. 1997 Jul;45(1):75-83.
鼻水の色のみで、抗菌薬の適応は決まりません。
研究の概要
今回は、鼻水の色の変化によって、患者の抗菌薬の処方希望がどう変化するか検討した研究になります。
1997年にアメリカから報告された調査になります。
対象の患者
対象となったのは、
- ケンタッキー・ルイジアナ州に在住
- 家庭医、総合診療医、内科医、ERなどに受診
になります。
シナリオ
この研究では、急性上気道炎(かぜ)の経過を想定した2つのシナリオを用意しています。
1つ目は、5日間の咽頭痛、咳、透明な鼻汁
2つ目は、5日間の咽頭痛、咳、膿性の鼻汁(黄色、茶色、緑色)
です。このシナリオをみて、どのように受診の必要性や処方に対する希望が変化するかを検討しています。
研究結果
上述のシナリオで、結果は以下の通りでした:
鼻水 | 透明 | 緑色 or 黄色 |
医療機関へ | ||
受診が必要 | 42% | 72% |
抗菌薬は | ||
有効と思う | 61% | 79% |
「鼻水が緑色 or 黄色」といった色の変化があっただけで、診断が大きく変わっているのが分かります。
さらに、治療はどのように変化しているでしょうか。
鼻水 | 透明 | 緑色 or 黄色 |
抗菌薬の処方率 | 8% | 59% |
「鼻水の変化」という情報のみで、抗菌薬の処方率が大きく変わっています。
また最終的に「急性上気道炎」と診断した医師においても、抗菌薬の処方率は「5% vs. 28%」と大きく上昇していたようでした。
感想と考察
アメリカの研究になってしまいますし、シナリオは成人になってしまいますが、「鼻水の色の変化」という情報のみで、抗菌薬の希望する割合が大きく変化しているようです。
1990年代の研究ですので、現代ではもう少し異なる結果かもしれません。
まとめ
今回は、1997年にアメリカから報告された、鼻水の色と抗菌薬の処方希望の関連性を検討した研究です。
かぜに矛盾しないシナリオでも、「鼻水が黄色 or 緑色だから」という理由で抗菌薬を処方を希望する傾向にあったようです。
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