- 鼻水が緑色 or 黄色なので、抗菌薬を処方
というプラクティスが一部であるようです。一方で、安易な抗生剤使用をすると、抗生剤を処方された小児だけでなく、地域での耐性菌も増加します。
今回はこのことを調査した研究をみましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 抗菌薬の処方と耐性菌の相関を検証
- 抗菌薬の処方量の多い地域は、個人レベルでも、集団レベルでも耐性菌は多い
Arason VA, et al. Do antimicrobials increase the carriage rate of penicillin resistant pneumococci in children? Cross sectional prevalence study. BMJ. 1996 Aug 17;313(7054):387-91.
黄/緑/茶色の鼻水だけで、抗生剤投与の根拠とはなりません。
研究の概要
今回は、1993年にアイスランドから報告された横断研究です。7歳未満の小児への地域別の抗菌薬の処方量と、個人レベルでの抗菌薬の処方量が、肺炎球菌の耐性率と相関しているか検討しています。
研究結果
研究結果は以下の通りでした:
- 小児の52.8%が肺炎球菌のキャリアであった
- そのうち、9.7%がペニシリン耐性肺炎球菌であった
- 抗菌薬の処方量が多い地域は、PRSPの可能性が高い
- 過去に抗菌薬を処方される機会の多い小児は、PRSPのキャリアである可能性が高い
感想と考察
地域レベルと個人レベルでの抗菌薬の処方量と耐性率を比較しており、非常に面白い結果でした。
個人個人の抗菌薬処方を減らすことも、その結果として地域での抗菌薬処方量を減らすことも、耐性菌の蔓延の予防につながるかもしれないですね。
まとめ
今回は、1993年にアイスランドから報告された、小児の抗生剤の処方量と耐性菌の相関をみています。
個人レベルで抗菌薬の処方回数が多くても、集団レベルで処方量が多くても、耐性菌の保有率が高くなります。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について