抗菌薬を処方するか否かの判断は多様です。通常の診察であれば、本人の病歴、これまでの既往歴、感染者との接触歴、診察、場合によっては検査をもとに抗菌薬の処方を判断しています。
このなかで、患者からの訴え、つまり病歴も大きな要素のひとつで、
- 痰がらみ
- 発熱
- 咽頭痛
- 鼻水の色
なども影響しているようです。今回はこのことを調査した研究をみましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 患者の症状と、抗菌薬処方の相関を検証
- 黄色の痰・鼻汁、発熱、咽頭痛は予測因子であった
- 透明な痰や乾いた咳は予測因子ではなかった
Murray S, et al. Predictors of an antibiotic prescription by GPs for respiratory tract infections: a pilot. Fam Pract. 2000 Oct;17(5):386-8.
黄/緑/茶色の鼻水だけで、抗生剤投与の根拠とはなりません。
研究の概要
今回は、2000年にオーストラリアから報告された横断研究です。
家庭医に「20歳、鼻汁、咽頭痛、発熱、咳」に関する情報が記載されたシナリオ付き質問票を送り、抗菌薬を処方を処方すべきかを答えてもらっています。
研究結果
研究結果は以下の通りでした。抗菌薬投与の予測因子は:
- 黄色の痰
- 発熱
- 咽頭痛・咽頭発赤
- 黄色の鼻汁
の順に強かったです。一方で、乾いた咳や透明の痰は予測因子ではありませんでした。
感想と考察
少し古い結果ですが、痰や鼻汁の色は抗菌薬の予測因子になっていますね。
個人的には、鼻汁の色が変化すると、細菌や白血球がどう変化しているのか、そこの理論的な論文をみてみたいです。
まとめ
今回は、2000年にオーストラリアから報告された、患者の症状が抗菌薬投与に与える影響をみた研究です。
黄色の痰・鼻汁、発熱、咽頭痛は抗菌薬処方の予測因子でしたが、乾いた咳や透明な痰は予測因子ではありませんでした。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について