小児の鼻腔には、肺炎球菌をはじめとした、様々な細菌が定着していることが知られています。今回は、乳幼児において、鼻腔内にどのくらい細菌がいるのか検討した結果を参照してみましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 小児において、鼻腔から検出される細菌を調査
- ほとんどの小児は、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラのいずれかを保菌している
Gordts F, et al. Bacteriology of the middle meatus in children. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 1999 May 5;48(2):163-7.
一般に、小児の鼻腔の培養と副鼻腔炎の病因微生物には相関がないと考えられています。
研究の概要
今回は、1999年にベルギーから報告された研究です。
扁桃腺・アデノイド除去術をうけた小児と、別の耳鼻科処置(外来で終わる軽い処置)を受けた小児から、中鼻道の細菌を培養しています。
研究結果
それぞれのグループで主要な細菌がどのくらい検出されたのかをみてみましょう。
手術 | 外来 | |
インフルエンザ桿菌 | 68% | 40% |
モラキセラ | 50% | 34% |
肺炎球菌 | 60% | 50% |
黄色ブドウ球菌 | 12% | 20% |
溶連菌 | 0% | 8% |
肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ・カタラーリスのいずれかが検出される割合は、扁桃腺・アデノイド摘出術をうけた小児の92%、外来で耳鼻科処置をうけた小児の70%で検出されています。
感想と考察
一般の方からすると、鼻の中に細菌がいるというと嫌な印象をうけるかもしれませんが、体外と鼻腔は繋がっているので、基本的には常に何らかの細菌がいます。
肺炎級菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ・カタラーリスなど中耳炎や副鼻腔炎、肺炎の起因菌となるような細菌も含まれていますが、基本的に保菌しているだけでは、特別な治療はいらないと考えられています。
まとめ
今回は、1999年にベルギーから報告された、かぜの時の鼻腔の培養からえられた細菌検査のデータです。
ほとんどの小児は、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラのいずれかの菌を保菌していたようですね。
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