今回は、フィンランドから報告された、手洗いの感染症予防効果を検証した研究をみていきましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 手洗いを介した感染症予防プログラムの効果を検証
- 感染症の発生率が低下し、抗菌薬の投与量が減った
Uhari, et al, An open randomized controlled trial of infection prevention in child day-care centers.
アルコール手指消毒剤が感染症の予防効果にどのくらいあるか検証した研究はたくさんあります。
研究の概要
目的
家庭外での保育は、小児の感染症を大幅に増加させます。このため、感染予防プログラムによって感染の伝播を減らす可能性を評価しなければならない。
設計と方法
感染予防プログラムの有効性を評価するために、20のデイケアセンターを対象に15か月のランダム化比較試験を実施した。
手洗いを推奨するプログラムは10施設に導入し、残りの10施設をコントロールとした。
子供その両親および保育所の職員の間での感染症の発生、感染症のための欠席を計測した。
結果
介入したグループでは、コントロールセンターと比較して、3歳の子供で9%[95%信頼区間 4〜16%]、年長の子供で8%(95% CI 0~14%)の感染リスク低下を認めた。
介入が行われた小児は、抗菌薬の処方が24%少なかった(95%CI、22~27%)。
同様に、介入したセンターでは、子どもの病気のために親が仕事を休むケースが2.5人年少なく、その差は24%であった(95%CI、18~29%)。
結論
プログラムを導入することで、児童保育所では感染症の効果的な予防が可能であり、これは家族と職員の両方に利益をもたらす。
このようなプログラムは専門看護師が実施しても費用対効果が高い。
感想と考察
デイケアセンター(保育所)に手洗いさせる研究は、学童と比較すると少ないので、貴重な研究ですね。
まとめ
フィンランドの保育所で、手指衛生を推奨するプログラムは、感染症のリスクを下げる可能性が示唆された研究です。
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