今回の研究は、2003年に行われたシステマティックレビューとメタ解析です。
成人・小児を対象に、手洗いが下痢のリスクをどの程度低下させたのかを評価しています。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
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2003年の手洗いと下痢の発症リスクを対象にした、システマティック・レビューとメタ解析
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手洗いを推進することで、下痢の発症率が半分ほどに低下
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成人・小児含め、手洗いでの感染予防は重要
手洗いの指導や、石鹸やハンドソープを提供すると、乳幼児の下痢の発症率は低下すると報告した研究は多数あります。
研究の概要
目的
システマティックレビューとランダム効果モデルを用いたメタ解析により、石鹸による手洗いが、地域社会における下痢性疾患のリスクに与える影響を明らかにした。
方法
手洗いと下痢性疾患を関連づけた研究を検索し、7件の介入研究、6件の症例対照研究、2件の横断研究、および2件のコホート研究が特定された。
検索には、電子データベース、手検索、および著者の知識などを用いた。
結果
介入試験から、手を洗わないことによる下痢性疾患の相対リスクは1.88(95% CI 1.31-2.68)であり、手洗いは下痢のリスクを47%減らすことができることを意味している。
すべての研究、高品質の研究のみ、および石鹸に特に言及している研究のみをプールした場合、リスク低下は42~44%と推定された。
重症腸管感染症および細菌性赤痢のリスクは、手洗いにより、それぞれ48%および59%のリスク減少が推定されます。
これらの結果をもとに、手洗いによっる下痢の予防可能な死亡者数は、潜在的には約百万(110万、下限推定値50万、上限推定値140万)と推定します。
一方で、多くの研究の質は低く、さらに出版バイアスによって、これらの推定値は過剰評価されている可能性がある。
結論
現在のエビデンスでは、石けんでの手洗いは下痢性疾患のリスクを42-47%減少させ、手洗いを促進する介入によって、百万人の命を救うかもしれません。
発展途上国における下痢および急性呼吸器感染症に対する手洗いの影響を測定するためには、より優れたデザインの研究が必要である
感想と考察
主に途上国のデータが多いですが、手洗いによって下痢の発症率低下、およびそれに伴う下痢による死亡者数の減少が推定されています。
下痢による死亡者数は、日本を含めた高所得国には一般化はできないでしょうが、下痢は小児の感染症でありふれており、手洗いで予防というメッセージは重要と思います。
まとめ
今回の研究は、2003年に行われた、手洗いと下痢の発症リスクを対象にした、システマティック・レビューとメタ解析でした。
手洗いを推進することで、下痢の発症率が半分ほどに低下させることが可能かもしれません。
成人・小児含め、手洗いでの感染予防は重要ですね。
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