今回の研究は、新型コロナウイルスによる学校閉鎖が、子供達の心理にどんな影響を与えたのかを調査した研究を見てみようと思います。
これまで普通に学校に行って生活していた子供達が、急に家庭で過ごさないといけなくなり、体も動かせない、友達にも会えない、など生活が一変してしまいました。
こういった環境変化に対して、子供の心理にどんな影響があったのかを調査しています。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 武漢と黄石市において、新型コロナが小学生の心理に与える影響を調査
- 20%ほどで抑うつ、不安の症状があり
- 学年が上がるほど、抑うつ症状のリスクが高くなる傾向
Confinement During the Coronavirus Disease 2019 Outbreak in Hubei Province, China. JAMA Pediatrics.
中国の武漢と黄石市で行われた調査のようです。
研究の概要
4月9日時点で、中国においては1億8000万人の生徒が、学校に行けず自宅で過ごしているようです。
世界的に見ても、188ヶ国で学校閉鎖をしており、15億7602万1818人の学生に影響があると推定されているようです。
方法:
今回の研究は、中国の湖北省にある武漢と黄石市で行われた調査のようです。
黄石市は、武漢から85km離れた都市のようです。学校閉鎖の事情は以下の通りです:
学校閉鎖 | 開始 | 終了 |
武漢 | 1/23 | 4/8 |
黄石 | 1/24 | 3/23 |
今回は、この期間である2/28〜3/5に、オンラインで調査が行われたようです。
調査の内容
調査をしたのは主に2つで、
- 抑うつ(Children’s depression Inventory-Short Form: CDI-SF)
- 不安(Screen for Child Anziety Related emotional Disorders)
です。
結果:
背景情報
まずは背景の情報を見ていきましょう。
1784の生徒が回答してくれたようで、全体の76%でした。背景情報の分布は以下の通りです:
% | |
性別 | |
男 | 56.7% |
女 | 43.3% |
学校の場所 | |
黄石市 | 62.2% |
武漢 | 37.8% |
学年 | |
2年生 | 20.9% |
3年生 | 18.4% |
4年生 | 22.8% |
5年生 | 16.7% |
6年生 | 21.2% |
精神状態について
精神状態については以下の通りでした
新型コロナに感染するのが心配 | |
非常に | 37.3% |
中等度に | 24.9% |
軽度 or なし | 37.8% |
新型コロナに対して楽観的 | |
非常に | 50.9% |
中等度に | 37.3% |
そうではない | 11.8% |
うつ状態 | |
抑うつ症状あり | 22.6% |
抑うつ症状なし | 77.4% |
不安 | |
不安症状あり | 18.9% |
不安症状なし | 81.1% |
2割前後で、抑うつや不安の傾向があると判断されたようですね。
抑うつ症状と相関する因子
抑うつ症状と相関する因子も見ています。
学年が上がるほど、感染する心配が多いほど、悲観的なほど、抑うつ症状が出ている印象です。
不安と相関する因子
年齢や居住地域はそれほど影響がなかったようですね。
コロナウイルスに対して楽観的か否かと逆相関していますね。本文でもあまり説明されておらず、少し物足りなさを感じました。
感想と考察
子供達も新型コロナによって環境が一変してしまい、心理的な影響を受けているのが分かります。外で遊べない、友人との交流がなくなったなど、様々な要因が影響しているのでしょう。
過去にもSARSなどの時に類似のサーベイがされているようですが、やはり同様の傾向があったようですね。このデータを持って、どう介入していくのかは、なかなか難しい議論のような気もします。
まとめ
中国の武漢と黄石市の小学生を対象に行われた調査で、新型コロナウイルスによる心理的な影響を見ています。
約20%ほどで抑うつや不安症状があり、前者に関しては学年が上がるほど多くなっているようです。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について