感染予防として、手洗い・マスクはよく言われますが、どのくらいのエビデンスがあるのでしょうか。
今回は、これらを検討したの研究を調べてみました。
- 中国において、インフルエンザにおける、手洗いやマスクの予防効果を検証
- マスクや頻回の手洗いは、感染予防になる可能性が示唆された
Facemasks and Hand Hygiene to Prevent Influenza Transmission in Households A Cluster Randomized Trial. Annals of Internal Medicine
インフルエンザにおける、家庭内での二次感染をみた研究です。
研究の概要
背景:
インフルエンザウイルス伝播の予防に関して、非薬物的介入の有効性を評価した、利用可能なデータはほとんどない。
目標:
手指衛生およびフェイスマスクの使用が、インフルエンザの家庭内伝播を防止するかどうかを検討する。
デザイン:
クラスターランダム化比較試験が行われた。
無作為化はコンピュータによって行われ、治療を行う医師や診療所は盲検され、最初の家庭訪問時に研究看護師によって実施された。一方で、研究デザインのため、介入を実施した参加者および担当者は、介入グループの割り当てについて盲検化はできなかった。(NCT 00425893)
患者:
香港の世帯。インフルエンザ様疾患の外来診療所を受診し、迅速検査(初発患者)でインフルエンザA型またはB型ウイルス陽性であった407人と、その259世帯に住む794人 (接触者) 。
介入:
全ての世帯員に生活習慣教育 (コントロール) (134世帯)をし、介入グループには、
- 手指衛生(136世帯)
- マスクと手指衛生(137世帯)
の指導を行なった。
測定:
接触者におけるインフルエンザウイルス感染を、 RT‐PCRで確認するか、7日後に臨床的に診断)。
結果:
259世帯・60人 (8%) の接触者で、介入後7日間において、RT-PCRによりインフルエンザウイルス感染が確認された。
対照群と比較して、手指衛生の教育は、インフルエンザ伝播を減少を示唆する結果であるが、フェイスマスク着用の追加効果は認めなかった。
N | OR | |
コントロール | 279 | 1.00 |
手洗い | 257 | 0.57 (0.26〜1.22) |
手洗い + マスク |
258 | 0.77 (0.38〜1.55) |
症状発症から36時間以内に介入を実施した154の家庭において、サブグループ解析をすると、フェイスマスク+手指衛生を使用した参加者の感染が少ない傾向であった(調整オッズ比、0.33 [95% CI、0.13〜0.87])。
N | OR | |
コントロール | 183 | 1.00 |
手洗い | 130 | 0.46 (0.15〜1.43) |
手洗い + マスク |
149 | 0.33 (0.13〜0.87) |
介入に対するアドヒアランスは低く、手洗い・マスクの効果は過小評価されている可能性があります。例えば、マスクの教育的な介入をした家族においても、本人の着用率は46%、同居人の着用率は26%と非常に低いです。
感想と考察
手洗いが重要なのは疑いようがありませんが、マスクを追加効果はわずかにある程度ですね。上述したように、「マスクをあげますので、このように着用してください」と教育的な介入をしたとしても、そもそも着用してくれるか、正しく着用できているか、といった別の問題も生じます。このため、100%の理想的なマスク着用があった場合と比較して、どうしてもマスクの介入効果は過小評価されてしまいます。
まとめ
インフルエンザに感染した家族において、本人・同居人に手洗い・マスクの使用を教育したところ、感染のリスクが下がりました。
マスク着用のアドヒアランスは低く、マスクの介入効果は過小評価されているかもしれません。
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