新型コロナウイルス

新型コロナウイルスの家族内感染の危険因子は?[中国編]

新型コロナウイルスの家族内感染の危険因子について、検討した結果があります。

これまで、「小児の感染例は少ないが、家族内感染を見ると、成人とそれほど変わらない」という意見もあったようです。

今回は、これらを検討したの研究を調べてみました。

ポイント

  •  中国において、新型コロナウイルスの二次感染率を検討
  •  小児は家庭内での二次感染率は低い傾向
  •  最初の感染者を症状が出現してすぐに隔離できた場合は二次感染率は低い
  •  発熱は二次感染率が上昇するが、咳はあまり影響しない
マミー
マミー
小児は移りにくいって本当ですか?

Dr.KID
Dr.KID
色々と報告はあるようです。過去の文献をみてみましょう。

  新型コロナウイルスにおける、家庭内での二次感染をみた研究です。

 研究の概要

背景

 SARS‐CoV‐2ウイルス(新型コロナウイルス)は、2020年3月15日までに中国の大部分の地域へと拡大し、8万症例以上が報告されている。さらに、国際的には、100カ国に拡大し、6万症例以上の報告がある。

ここでは、家庭レベルでのコホート研究を応用し、 COVID‐19の家庭内伝染の特徴を決定した。

方法

合計105人の初発患者と392人の家庭内接触者をコホートに登録した。

発端者と家族の両方をSARS-CoV-2のRT-PCRで検査した。さらに、患者の情報を医療記録から抽出し、適宜、電話インタビューにより確認または補足した。

発端者と接触者のベースライン特性を記述し、接触者に対するSARS‐CoV‐2の二次感染率を計算し、家庭内伝播の危険因子を推定した。

結果

SARS-CoV-2の二次感染は、 392人の家庭内接触者のうち64人 (16.3%) で発症した

小児(中央値 6.5歳)の二次感染率は4%で、成人では17.1%であった。

詳細は以下の通りです:

年齢 感染者 N 二次感染%
0-5 1 44 2.3%
6-17 3 56 5.4%
18-30 12 55 21.8%
31-40 14 76 18.4%
41-50 9 35 25.7%
51-60 18 71 25.3%
> 60 7 55 12.7%

発症時から隔離した場合、家庭内接触者の二次感染率は0%であった。一方で、隔離しない場合、家庭内接触者の二次感染率は16.9%であった。

発端者の配偶者への二次感染率は27.8%であり、家庭の他の成人メンバーへの二次攻撃率は17.3%であった。

 

発熱がある(19.2% vs. 13.4%)方が二次感染率が高いです。一方で、咳の有無はほとんど影響していないです(15.7% vs. 16.6%)。

結論

家庭におけるSARS‐CoV‐2の二次感染率は16.3%である。

家庭内接触の年齢と発端者との配偶者関係は、家庭内でのSARS‐CoV‐2感染の危険因子である。

発症後の初発患者を在宅で隔離することは、家庭内でのSARS‐Co‐2感染予防に有用である。

感想と考察

仮に新型コロナウイルスに感染してしまった場合、極力、家庭内での感染の可能性を減らしたいと考える方が多いのではないでしょうか。

その手段の1つとして、隔離があります。医療機関での隔離は選択肢の1つですが、軽症者が多いと病院がパンクしてしまいます。今回は、政府が指定した場所で隔離し、医療従事者が毎日モニターをするという方策を取ったようですね。

Dr.KID
Dr.KID
症状が出たら早期の隔離が良さそうですが、なかなか診断までに時間がかかるケースがあると難しいですね。

これまで、小児への二次感染率は成人と同じくらいと言われていましたが、どうやらそうでもなさそうですね。

まとめ

今回の研究では、家庭内での二次感染に関与する因子を検討しています。

小児は二次感染率は低い傾向にありました。

最初の感染者の症状が出てすぐに隔離をした方が有効で、発端者は発熱している方が二次感染率はやや高いようです。一方で、咳の有無は二次感染にあまり影響していない印象です。

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。