感染予防といえば、手洗い・マスク・うがい、などと言われています。
これまで、手洗いとうがいのエビデンスは沢山解説してきましたが、うがいはどうでしょうか。
イランで行われた症例対象研究で、うがいの有効性を検証した論文がありますので、今回はそちらを解説していきます。
- うがいの有効性を検証したイランでの観察研究
- 巡礼者において行われた症例対照試験
- 塩水によるうがいは、呼吸器感染症に対して予防効果があるのかもしれない
症例対照研究で、うがいの有効性を比較しています。
研究の概要
背景:
呼吸器感染症はハッジ巡礼者(the Hajj pilgrims)に非常によくみられる。
これらの感染を制御するために、インフルエンザワクチン接種、フェイスマスクの使用、塩水によるうがいなどのいくつかの予防対策が考慮されてきた。
しかし、これらの各対策の効果については相反する結果が報告されている。
この研究では、呼吸器感染症に対するこれらの効果を評価した。
方法:
イラン人巡礼者338人からなるコホートのデータを用いて、Nested Case-Control Studyで行われた。
アウトカムは、感冒以外の全ての呼吸器感染症とした。アウトカムが発症した人をケースとし、コントロールは同日に二人ランダムに抽出して、情報を収集した。
結果:
32人の巡礼者 (9.5%) が感冒以外の呼吸器感染症に罹患した。単変量ロジスティック回帰分析では、塩水うがいなし(OR=2.4)、部屋での他の患者の接触(OR=2.14)、 60歳以上の年齢(OR=1.84)および2年以下の教育(OR=1.93)が呼吸器感染症と相関していた。
しかしながら、多変量ロジスティック回帰分析でも、同様の傾向であったが、95%信頼区間は広く、不正確な推定であった。
結論:
この研究は、季節性インフルエンザワクチン接種、フェイスマスクの使用およびマットの個人使用といった対策は、呼吸器感染症の発生に影響しなかった。一方で、のどや口を塩水でうがいをするのは、予防効果があるのかもしれない。
感想と考察
「コントロールと比較して、呼吸器感染症を発症した人は、塩水でのうがいをしていないオッズが2.4倍高かった[0.89〜6.47]。年齢、性別、同じ部屋での接触者がありなど交絡因子を対処した場合、このオッズ比は2.3倍[0.79〜6.47]であった」という結果でした。
ケースコントロール研究では、アウトカムから入って、アウトカムがある人とない人における曝露(今回でいえば「うがい」)を比較します。
このため、「呼吸器感染症を発症した人ほど、うがいをしていない傾向にあった」だ得られる結果ですが、ここから時制を考慮して「うがいをしていない人ほど呼吸器感染症を発症するのかもしれない」「うがいをする人ほど、呼吸器感染症のリスクが低い」「うがいは予防効果があるかもしれない」と考えていきます。
遠回しのように感じますが、症例対照研究ではこのように間接的に解釈を進めていきます。
まとめ
今回の研究では、イランの巡礼者のコホートにおいて行われた症例対照研究で、呼吸器感染症の発症を関連した因子の探索をしています。
塩水によるうがいは、呼吸器感染症の発症に予防効果が示唆されましたが、不正確な結果ですので、再検証は必要でしょう。
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