欧州小児科学会誌から、小児のマスクの着用に関して説明した論文が発表されました。
今回はそちらを説明していこうと思います。タイトルはちょっとチャレンジングで「To mask or not to mask children to overcome COVID-19」です。
- 新型コロナ流行下で、小児のマスク着用の是非を議論
- 2歳以上であれば、布マスクかサージカルマスクの着用を推奨
- 2歳未満は、呼吸が苦しくなる、自分で外せないなどのリスクから、着用を推奨していない
European Journal of Pediatricsからの報告
研究の概要
今回はアブストラクトの解説というより、少しナラティブに解説していきます。
ご存知の方が多いかもしれませんが、小児の新型コロナウイルスは、無症状と軽症例が多いです。確かに、重症例や高齢者の方が、ウイルスの排泄量が多く、感染性が高いとは言われているようですが、これは「小児は感染させない、無症状であれば感染させない」を意味しません。単に、ウイルスの排泄量が少ない、感染性はそれほど高くないかもしれない、という解釈ですて、0か1かの問題ではないのです。
小児での報告ですと、新型コロナウイルスへの感染がPCRで確定した症例の10〜30%ほどは無症状と考えられています。重症化するのは非常に一部の小児でして(5〜10%未満)、大半の小児は自然に軽快するので、医療的な介入は不要と考えられています。
一方で、無症状や軽症者の場合、症状が乏しいために「新型コロナウイルスに感染している」と気づかないまま、ウイルスを拡散させてしまう可能性があります。エビデンスレベルとしては不確かですが、会話や呼吸でも、ウイルスが排出されることが示唆された研究もあるようです。
このため、マスクを着用することで、無症状・軽症者はウイルスの拡散をある程度は減らすことができます。また、完璧ではないにしても、マスクを着用することで、感染のリスクは下がってくれるかもしれません。
この辺りを考慮しての提言のようです。
マスクの種類は?
マスクには大きく分かれて、布マスク、サージカルマスク、N95があります。
小児に関する推奨は以下の通りです:
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布マスク | 2歳未満は推奨しない |
サージカルマスク | 3歳以上で市販のものもある |
N95 | 基本的に推奨しない (*例外:免疫抑制状態の小児など) |
家庭用ですと、布マスクが主流かもしれません。2歳未満は、気道が狭く、呼吸が苦しくなる可能性、自分で上手く外せない可能性を考慮して、着用は推奨していません。
あと、N95マスクに関しては、一部の例外的な症例を除いて、推奨していません。これらは必要なお子さんへの供給が重要であることと、完璧にフィットさせるとかなり苦しい、正しく装着できない可能性があるなど、日常的な使用には向かない側面もあるのでしょう。
感想と考察
マスクに関する見解が明確に述べられていましたね。マスクのエビデンスに関しては、以下のnoteでまとめています。ご興味があればどうぞ。
マスク以外にも、手洗い・うがいなどを組み合わせることもお勧めします。
手洗い、うがいのエビデンスについて、気になる方は、以下のnoteでまとめています。小児においても調査した研究が複数あるようです:
まとめ
今回は、小児のマスク着用に関して、欧州小児科学会誌に記載された提言を簡単に紹介しました。
2〜3歳以上の小児は、市販の布マスクまたはサージカルマスクの着用が推奨されているようです。
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