新型コロナウイルス

新型コロナウイルス流行下で、小児のワクチン接種はどう変化した?[アメリカ編]

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)から、新型コロナウイルス流行に伴い、小児に必要な通常のワクチン接種量がどのように変化したのかを調査した結果になります。

アメリカでは1月後半にワシントンで最初の感染例が報告され、3月に国家緊急事態宣言がなされています。このため、一般の方々は外出を控えるようになり、これまでルーチンで受けていた健診やワクチン接種も行われなくなってきているようです。

ポイント

  •  アメリカの小児におけるワクチン接種のトレンド調査
  •  2019年度と2020年度で比較
  •  3月の国家緊急事態宣言後にワクチン接種は急速に低下
マミー
マミー
新型コロナウイルスが流行していますが、小児でのワクチン接種や健診は皆さん控えているのですか?

Dr.KID
Dr.KID
色々と報告はあるようですが、アメリカの報告をみてみましょう。

  CDC (Center for Disease Prevention and Control)からの報告

 研究の概要

今回は、トレンドをみたグラフにインパクトがあったので、そちらを見てみましょう。


(原著より拝借:日本語訳を追記)

2019年と比較して、2020年は当初からワクチン接種量がやや少ないですが、1月後半の最初の感染例の報告から、徐々に減少の幅が大きくなっているようです。特に、3月の国家緊急事態宣言から急速に減少幅が拡大しているのが分かります。

2歳未満と2歳以降での比較(下の図)もしていますが、2歳未満は減少傾向にはあるものの、徐々にワクチン接種をするようになってきているようです。アメリカの戦略として、まずは2歳未満に必要なワクチンと健診の機会を優先するように、システムとして働きかけているようで、その効果のようですね。

感想と考察

新型コロナウイルスの流行に伴い、どこの国も同じような問題を抱えている気がします。

どの年齢を優先させるべきかは難しい問題ですが、2歳未満はワクチン接種と健診の項目も多いのと、ワクチンで予防できる感染症の重症化のリスクや健診でのスクリーニングの重要性から、優先させているのでしょう。

日本小児科学会でも、以下のようなメッセージが出ています(参考):

乳幼児健診の目的は、年齢ごとに起こりやすい病気や問題を早めに見つけて治療などに結び付けることです。予防接種についても、感染症にかかる前に接種する事が極めて重要です。

新型コロナウイルス感染症を予防するための対策も重要ですが、極端な制限によって予防できる他の重要な病気の危険性にさらされることを避ける必要があります。今後も数か月単位での流行が想定され、その間に乳幼児健診や予防接種を回避するデメリットは大きいと考えられます。実施にあたっては、いつも以上の配慮が必要になりますが、保護者と実施者が協力し可能な限り予定通りに実施すべきと考えます。

感染者が多く緊急事態宣言が発出されている地域では集団での健診や予防接種を行う体制を整備する事は困難だと思います。

まず、集団健診や集団接種を実施している自治体においては、臨時的にでも個別健診や個別接種を可能としてください。本来なら接触する可能性のない子どもや成人を同じ場所に集めないだけで、非常に有効な感染拡大防止に繋がります。また、保健指導等は必要に応じて電話等でおこなうことも検討してください。

集団・個別に関係なく、一般的な感染症対策として、お子さんや付き添いの保護者の方については、発熱や咳などの症状がないことを確認すること、成人では手指消毒や手洗いの励行とマスクの着用は必須です。

また、可能な限り、きょうだいや祖父母などの同伴を避けること、健診や予防接種の会場や医療機関でオムツを替えないこと(新型コロナウイルスは糞便中に排泄される可能性が指摘されているため)も心がけてください。

どうしても集団で実施する自治体においても、時間ごとに来場・来院する人数を調整したり、会場の動線などに配慮して人の接触が最小限になるよう工夫すると共に、必要に応じて会場や器具の消毒や来場者の手指消毒や手洗いができるよう資材等を準備してください。加えて、健診や予防接種の機会を逃したお子さんについては、後日必ずその機会が与えられるよう配慮してください。

集団での健診や予防接種はやや厳しいかもしれませんが、個別に切り替えるなど、自治体毎に対応が必要とは思います。

Dr.KID
Dr.KID
地域によって事情が異なるので、少し難しい問題とは思いますが…

まとめ

今回は、アメリカの小児において、新型コロナウイルスの流行によって、ワクチン接種がどのくらい減ってしまったのかをみた報告を解説しました。

緊急事態宣言後に大きく減少していますが、2歳未満のワクチン・健診を優先させる戦略もあり、徐々に増えてきているようです。

 

今回の記事は、伊藤健太先生のツイートにインスパイアされて、執筆しました。

伊藤先生は小児感染症の書籍を執筆されています↓↓

created by Rinker
金原出版
¥5,940
(2024/11/20 23:42:27時点 Amazon調べ-詳細)

 

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。