- 川崎病にIVIGをアスピリン
すでに医学生でも知っているようなことですが、この根拠がどこから来たのか知っている方、エビデンスの詳細を知っている方は意外と少ないのかもしれません。
今回の研究は、この方針に科学的な根拠となる論文の1つで、アメリカから報告されたものです。今回は10時間 vs. 4日間かけての投与での冠動脈病変のリスクを比較した論文です。
- 1991年に報告されたアメリカからのRCT
- IVIGを10時間 vs. 4日を比較
- 短時間投与のほうは、14日以内の冠動脈病変は、リスク比にして半分ほどに
これも、アメリカから報告された、超有名な論文です。
研究の概要
背景:
川崎病の急性期において、アスピリンを併用して、4日間静脈内ガンマグロブリン投与すると、冠状動脈病変の予防に安全かつ効果的であることが示されている。
高用量のガンマグロブリン単回投与による治療は、少なくとも標準レジメンと同程度に有効であると仮説をたてて、研究を行なった。
方法:
多施設ランダム化比較試験によって、急性期川崎病549人の患者を対象に研究が行われた。
対象者には、
- ガンマグロブリンを2 g/kgを10時間かけて単回投与
- ガンマグロブリンを400 mg/kgを4日間連続で投与
のいずれかにランダムに割り付けた。
両治療群はアスピリン(100 mg/kg/日を第14日まで、その後3~5 mg/kg/日)を投与された。
結果:
単回注入レジメンで治療された患者と比較して、 4日間かけて治療された冠動脈病変のリスク比は、
- 2週間後:リスク比 1.94 [1.01-3.71]
- 7週間後:リスク比 1.84 [0.89-3.82]
であった(患者の年齢および性別で調整)。
単回注入レジメンで治療された小児は、入院中の平均体温が低く(2日目、3日目)、平均発熱期間が短かった。
さらに、単回投与群では、血清アルブミンレベル、α1‐アンチトリプシンレベル、およびCRPを含む急性炎症のマーカーは、より早く正常化に向かった。
4日目にIgGレベルが低いと、冠動脈病変のリスクは高い傾向にあった。
副作用の発生率は2グループで同程度であり、全体では2.7%であった。
考察と感想
川崎病の急性期の治療の違いによる有効性の違いを検討しています。
IVIGは、かつては4〜5日かけてゆっくり投与だったようですが、短時間での単回投与のほうが成績がややよく、現在ではこちらが標準治療となっています。
日本では、1日かけて投与する施設が多い印象ですが、アメリカでは10時間で投与のようですね。このあたりは、医療保険での入院期間の縛りなどもあるのでしょう(知り合いの米国人医師話によると、アメリカの川崎病の入院では48時間以内に退院のようです)
まとめ
川崎病に免疫グロブリン投与は、4−5日かけた投与より、10時間で投与するほうが成績がよさそうである、と示唆されたアメリカからのランダム化比較試験でした。
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