今回は、新型コロナウイルスの偽陰性率をタイミングによって異なるかを検討した結果を紹介しようと思います。
- 発症前の偽陰性率は高い
- 発症後数日で、偽陰性率は低くなるが、それでも20%くらい
新型コロナウイルスのPCR検査の偽陰性率を推定した研究
研究の概要
背景
RT-PCRに基づく新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) の検査は、曝露を受けた入院患者や医療従事者などの高リスク者の感染を「除外する」に用いられることがあるようです。
しかし、偽陰性(つまり、本当は感染しているが、検査結果が陰性になること)によって誤って安心することを避けるため、検査の予測値が曝露および症状発現からの時間によってどのように変化するかを理解することが重要である。
方法
文献レビューとメタ解析で、感染後の日数による偽陰性率を推定しています。
対象となった7つの研究で、上気道(n=1330)からのサンプルを用いいます。症状発症からの時間とRT-PCR性能に関するデータを使用し、ベイジアン階層的モデルを用いて、曝露後および症状発現後の日ごとの偽陰性率を推定した。
対象となったのは、新型コロナウイルスに感染した入院および外来患者です。
結果
典型的な発症時期を5日目と設定しています。
それより以前で、感染者が偽陰性となる確率は、1日目の100% (95% CI、100%~100%)、4日目の67% (CI、27%~94%)と推定されています。
発症日(典型的には5日目)の偽陰性率の中央値は38% (95%CI、18%~65%)であった。これは8日目(症状発現3日後)には20% (CI、12%~30%)に減少し、9日目の21% (CI、13%~31%)から21日目には66% (CI、54%~77%)に再び増加し始めた。
表にすると以下のようにできそうです:
日程 | 偽陰性 | 95%CI |
1日目 | 100% | |
4日目 | 67% | 27〜94% |
5日目 (発症日) |
38% | 18〜65% |
8日目 | 20% | 12〜30% |
9日目 | 21% | 13〜31% |
21日目 | 66% | 54〜77% |
偽陰性率のFigureも公開されていました:
(文献より拝借)
点線が5日目(発症日)です。
こちらは、検査前確率で場合分けをして、検査後確率を推定しています。
結論
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染のRT-PCR検査を解釈する際、 特に感染の初期には偽陰性には注意が必要です。
臨床的に疑いが強い場合は、RT-PCRのみで感染を除外すべきではなく、臨床的および疫学的状況を念頭に、慎重な判断が必要でしょう。
感想と考察
PCRの場合、タイミングによって偽陰性率が大きく変動するようです。
感染したけれども症状が出ていない期間は、特に偽陰性率が高そうです。こういったグラデーション的な理解も重要ですね。
まとめ
今回は、RT-PCRの偽陰性をタイミングによって推定した研究でした。
特に発症前の無症状の期間にPCR検査をしても、偽陰性の可能性は高いそうで、発症してから数日後がもっとも偽陰性率は低そうでした。
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