新型コロナウイルス

新型コロナウイルスに感染した小児の特徴は?[イタリア編]

今回は、新型コロナウイルスに感染した小児における特徴を記したイタリアの大規模な研究結果を紹介しようと思います。

ポイント

  •  イタリア北部を中心に、新型コロナウイルスに感染した小児168人のデータ
  •  年齢分布、入院率、重症化率などを記述
マミー
マミー
今日は、どんな新型コロナウイルスの情報ですか?

Dr.KID
Dr.KID
イタリアからの最新の報告をみてみましょう。

  新型コロナウイルスに感染した小児の特徴を記した研究です

 研究の概要

2020年4月10日の時点で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認され、適切な追跡調査を受けた17歳未満の小児は168人でした。ほとんどの場合少なくとも2週間は経過観察して、転機を見極めています。

年齢分布

平均年齢は5歳(中央値:2.3年、4分位範囲 (IQR) :0.3~9.6年)であった。内訳は以下の通りです:

  •  < 1歳:39%
  •  1-5歳:23%
  •  6-10歳:14%
  •  11-17歳:24%

意外と1歳未満が多いですね。

 年齢別の入院率

半分以上の子供 (65.1%) は入院しています。年齢別の入院率は以下の通りです:

  •  < 1歳:79%
  •  1-5歳:63%
  •  6-10歳:54%
  •  11-17歳:53%

合併症・基礎疾患

33人の子供 (19.6%) は、基礎疾患があり、内訳は以下の通りです:

  • 慢性肺疾患(n=7)
  • 先天奇形または遺伝疾患(n=14)
  • 悪性腫瘍(n=4)
  • てんかん(n=5)
  • 胃腸疾患(n=2)
  • 代謝疾患(n=1)
  • 免疫抑制(n=4)または免疫不全(n=3)

入院率は基礎疾患のある子供とない子供の間で同様でした(23/33 vs. 87/135)。

家族内感染・接触について

家族以外でのCOVID-19感染者との密接な接触はほとんど報告されていないようです。逆に、 67.3% (113/168) の子供は、少なくとも片方の親がSARS‐CoV‐2陽性だったようです。家族の先行感染は、多くの例で(88/113、77.8%)、 1〜14日に先行していたようです。

症状について

症状の内訳の概要は以下の通りです:

  • 無症状 (2.5%)
  • 発熱 (82.1%)
  • 咳 (48.8%)
  • 鼻炎 (26.8%)
  • 胃腸症状 (18.4%)

そのほか、5人はけいれんを発症し、そのうち3名はてんかんの既往が、 1名は熱性痙攣の既往が、残り1名はCOVID‐19は熱性痙攣の初回エピソードのようです

検査結果

血液検査を受けた小児において、 CRP > 0.5 mg/dlが最も一般的な異常所見でした(47/121、38.8%)。

白血球減少、好中球減少、リンパ球減少、 CKまたはLDH値の増加といった、成人で頻繁に遭遇するような以上所見は稀でした(データは提示されず…)。

合併症や共感染

合併症は33人の小児 (19.6%) で生じ、内訳は以下の通りでした:

  • 間質性肺炎(n=26)
  • 重症急性呼吸器疾患(n=14)
  • 末梢血管炎様の症状(n=1)

33名中2名が挿管・人工呼吸器を要しています(早産児と先天性心疾患の2か月齢乳児)。

非侵襲的酸素治療を168人の子供のうち16人 (9.5%) に行った。

胸部CTスキャンを受けた子供はおらず、X線または超音波の評価で、肺炎は75人に認めました。

Dr.KID
Dr.KID
CTが0なのは、意外でしたね。中国などのデータとは対照的です。

共感染に関しては、

  • 3人:RSウイルス
  • 3人:ライノウイルス
  • 2人:Epstein‐Barrウイルス
  • 1人:インフルエンザAウイルス
  • 1人:non-SARS coronavirus 感染

と、10人の子供 (5.9%) でウイルスの共感染が報告されています。肺炎球菌の共感染もいたようです。

経験的な治療について

経験的な治療として、

  • ロピナビル/リトナビル
  • ヒドロキシクロロキン
  • アジスロマイシン/クラリスロマイシン

が49人の子供 (29.2%) に投与されています。

ステロイド全身投与は1例のみであった。
抗ウイルス治療は、より重症の子供に選択的に与えられていたようです。

感想と考察

イタリアの大規模な調査でしたが、色々と詳細に見られていて勉強になりました。

あとは、一部、データが示されておらず、supplementだけでもいいので、載せて欲しかったです。

Dr.KID
Dr.KID
議論していて「data not shown」は、読み手からすると、かなりがっかりします。他の論文でも、時々見かけますが、あまり好ましくないと私は思います。

まとめ

今回は、イタリアの小児において新型コロナウイルスに感染例のデータを解説しました。

症状、家族内感染、入院率、重症化の割合など、情報が豊富でした。他国との比較も、後日、まとめ記事でできればと思います。

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/04 01:32:15時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。