- スクリーンタイム(テレビやスマホを使用する時間)は乳幼児の発達に影響しうるので、気を付けましょう
乳幼児健診などでよく聞く話かもしれません。
アメリカ小児学会は、「2〜5歳のスクリーンタイムは1時間まで」「2歳未満は0時間」としているようです。
今回の研究は、この方針に科学的な根拠となる研究の1つです。
結論から言うと、1歳未満の乳児は、スクリーンからの音声では、たとえ動画があっても言語獲得に影響がほとんどないようです。一方で、対面形式で生の言葉を浴びせることが言語獲得に有利なようです。
- 0歳児(乳児)のスクリーンタイムについて
- 録画した音声では、乳児はほとんど言葉を学習できない傾向
- 対面形式で、生の声を浴びせる必要がある
スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。
研究の概要
研究の背景
乳幼児は著しい速度で言語を獲得する。
その一方で、言語獲得の過程において、基礎となるメカニズムについてはほとんど知られていない。
これまでの言語の音声学的単位の研究によると、乳幼児期に、母国語および外国語を含む、全ての言語の違いを識別できることが示されている。しかし、生後6〜12カ月の間に、外国語の発音単位を識別する能力は急激に低下することも分かっている。
今回は、2つの研究を行い、外国語音声の認識力低下を逆転させるための必要十分条件を調査した。
実験1
アメリカにおいて、中国語を母国語とする話者に、生後9か月齢の幼児を12回の実験室セッションで曝露させた。
コントロール群も12の言語セッションに参加させたが、英語しか聞いていなかった。
その後に中国語音声認識の試験をすると、コントロールグループで認めたような中国語音声への認識能の低下は、中国語へ意図的に曝露させたグループでは認めなかった。
実験2
同じ外国語の話者と教材を用いて、乳児を「オーディオビジュアル」または「オーディオのみ」に曝露させた。
結果ですが、事前に録音された中国語への曝露は、対人的な相互作用なしでは効果がなかった。
生後9〜10カ月の間に、乳児の外国語学習能力は、事前に録音された教材ではなく、肉声への生の曝露を介して音声学的学習を示す傾向にあるようです。つまり、乳児の言語学習には、社会的相互作用によって強化されるプロセスを経ている可能性が示唆される。
結果のサマリーはこちらのようですね:
感想と考察
この研究では、ネイティブでない言語への曝露を維持するため、DVDの録音を使用しようとした研究です。
子供は生まれた時は、どんな言語からでも音を学ぶことができます。しかし、年をとるにつれて、定期的に聞く音に特化するようになります。
この研究者たちは、英語を母国語として話す9〜12カ月の乳児を対象に、直接の対人または録画されたDVDを通して、中国語の音に曝露されるようにした。
その結果、直接会って生で声を聞いていたグループには学習効果があったが、DVDに録画された音声を聞いても、ほとんど学習効果がなかったのです。
まとめ
今回の研究では、母国語以外の言葉を利用して、乳児が対面による生の言葉またはDVD・CDからの言語学習能力の違いを検討しています。
乳児においては、対面で生の言葉を聞かせる方が言語獲得には有利で、録画・録音では言語学習においてはほとんど影響しないようです。このため、スクリーンタイムをなくし、しっかりと乳児に語りかける方が良いとされているようです。
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