- 川崎病の治療はIVIGとASA
これは標準治療で、医学生でも知っている内容かもしれません。
近年、ハイリスク患者(IVIGを投与しても解熱せず、冠動脈病変を来たしやすい)に対し、ステロイドを併用する治療法が行われることがあります。
今回は、この治療方法の再検証が行われています。
- 2018年日本からの報告
- 重症型の川崎病に対し、ステロイド併用療法の有効性と安全性を追試
- RAISE studyと同じような結果が得られたと
日本から報告された大規模な観察研究ですね
研究の概要
背景:
RAISE Study(2012年Lancetに掲載)は、プレドニゾロン併用療法が、IVIG抵抗性のリスクが高い「ハイリスク川崎病患者」の冠動脈転帰を改善することを示した。
しかし、 RAISE studyで使用されたステロイドの治療レジメを、追加検証する研究は行われていない。このため、IVIG+プレドニソロンの効果と安全性を検証することを目的にした。
方法:
日本の34病院で多施設前向きコホート研究を行った。日本の診断基準に従って川崎病と診断された患者を研究対象とし、参加病院に転院する前に他の病院で治療された患者は除外した。
診断時に発熱のあった患者は、川崎病発症後2か月間、解熱するまではIVIG (2 g/kg, 24時間毎)と経口アスピリン(30 mg/kg/日)を受け、続いて経口アスピリン(5 mg/kg/日)を受けた。
小林スコアを用いて、IVIG不応が予測される患者(小林スコア5以上)またはIVIG応答が予測される患者(小林スコア<5)に層別化した。
IVIG不応が予測される患者に対して、各病院は、それぞれの治療方針に従って、初回IVIG治療にプレドニゾロン(1日2 mg/kgを5日間静脈内投与)を追加するかどうかを独立して決定し、著者らは、受けた初回治療に基づいてこれらの患者をさらに分割した。
IVIG不応例が予測される患者において、IVIG+プレドニゾロンで治療した1か月後の心エコー検査で測定した冠動脈病変の発生率を一次エンドポイントとした。
冠動脈病変は、日本の厚生省および米国心臓協会 (AHA) の基準に従って定義した。
結果:
2012年7月1日~2015年6月30日の間に、川崎病の2628人の患者を組み入れ、その中の724人 (27・6%) は、IVIG不応性が予測されるため、初期治療としてIVIG+プレドニソロンを投与した。
この724例中132例 (18.2%) は、初回治療に反応しなかった。全データ中、冠動脈異常は、 AHA基準では676人中40人(発生率 5.9%;95%CI, 4.3〜8.0)または日本基準に従うと677人中26人(3.8%;2.5〜5.6)に存在した。
重篤な有害事象は、 IVIGとプレドニゾロンの併用療法を受けた724例中12例 (1.7%) で報告された。
これらの患者のうち2人は高血圧とおそらくプレドニゾロンに関連した菌血症を有していた。1人の患者は、川崎病による重度の炎症により死亡した。
解釈:
この研究におけるIVIG+プレドニゾロン療法は、初回治療不応のリスクを低下させ、冠動脈異常の発生率を低下させるという点で、 RAISE研究で見られたものと同様の効果を示した。
初回IVIGとプレドニゾロンの併用療法は冠動脈異常を予防し、医療費の低下に寄与する可能性がある。
考察と感想
RAISE studyは、ハイリスクの川崎病患者にステロイドの有効性が示唆された研究で、Lancetに掲載されたのもあり、非常に有名な研究です。小児科医で知らない人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
その追試になります。薬剤疫学的には、post-marketing trialなどと言われていますが、臨床試験を行った後に、その薬剤が「リアルワールド」でどのくらい有効かを追跡する研究ですね。
こうして、しっかりと順番通りに、エビデンスを集積することは、非常に重要と思います。
まとめ
日本で行われた川崎病のハイリスク患者を対象にした観察研究で、初期からIVIGにステロイドを併用する治療方法の追試をしています。
前回のRAISE studyと同じくらいの治療成績を認めていたようです。
川崎病のこちらの本、読んでみたいですね↓↓
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/04 01:32:15時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について