新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症の小児の重症例は?[フランス編]

今回の研究は、フランスの単施設でPICUに入室した27例の小児の報告をまとめた文献になります。

ポイント

  • フランスの単施設で、PICUに入室した27例の小児の報告でした。
  • 患者の特徴、臨床所見、検査所見、疾患管理および転帰を記述しています。
  • 死亡した5例についても詳細な経過が記載されていました。
マミー
マミー
新型コロナウイルスの重症例の報告はありますか。

Dr.KID
Dr.KID
過去の文献をみてみましょう。

  フランスから報告された27例

 研究の概要

背景

小児の新型コロナウイルス感染症の重症例に関して、患者の特徴、臨床所見、検査所見、画像所見、疾患管理および転帰を記述した観察研究になります。

方法

この研究は、パリにある病院の小児集中治療室(PICU)で行われた後向き観察研究です。

生後1か月から18歳で、新型コロナウイルスが確認 or 強く疑われた全ての患者が対象となりました。

結果

最終的に、27人の子供のデータを分析しています。

合併症(n=19、70%)の内訳は、

  • 神経疾患(n=7)
  • 呼吸器疾患(n=4)
  • 鎌状赤血球症(n=4)

がメインでした。

SARS-CoV-2のPCR結果は、 24人の子供(鼻咽頭スワブ)で陽性であった。残りの3人の小児は、新型コロナウイルス感染として矛盾しない胸部CT初見でした。

胸部CTでは、24人 (89%) に呼吸器病変が認められた。

PICUでの支持療法は、

  • 侵襲的機械的人工換気(n=9)
  • カテコールアミン(n=4)
  • 赤血球フェレーシス(n=4):鎌状赤血球に対して
  • 腎代替療法(n=1)
  • 体外式膜型人工肺(n=1)

でした。

最終的に5人の子供が死亡し、そのうち3人は既往歴がなかった。

結論

この研究は、小児において、臨床症状、疾患進行の時間経過、併存症、致死的症例を記述しています。

小児において、新型コロナウイルスの病原性の根底にある機序を明らかにするため、さらなる研究が必要でしょう。

感想と考察

この論文には、死亡例5つの詳細も記載されていました。

症例1:16歳女児

既往歴のない16歳女児が1週間の咳と発熱後に呼吸窮迫と低酸素症を呈した。

CT所見は新型コロナウイルス感染に典型的であり、 鼻咽頭スワブPCRにより確認した。
患者は呼吸窮迫発症の24時間後にPICUに入院した。

入院6時間以内に、侵襲的機械的換気と心肺蘇生の開始にもかかわらず、難治性低酸素症につながる急速な呼吸悪化を観察した。

症例2:16歳男児

既往歴のない16歳男児が昏迷とGCS 11点を伴う無菌性髄膜炎を呈した。

鼻咽頭スワブで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 PCR )陽性でしたが、呼吸器症状した。

海綿静脈洞血栓症を伴う蝶形骨洞炎がMRIで同定された。
血液培養ではFusobacterium necrophorumとStreptococcus constellatusが陽性であった。

外科的ドレナージ、抗生物質および抗凝固療法にも関わらず、左中大脳動脈卒中と関連した右片麻痺が4日目に生じ、続いて7日目に重度の意識レベルの悪化が生じ、昏睡を生じた。

昏睡は、全ての脳血管の進行性狭窄および脳虚血と関係した、難治性で致死的な頭蓋内高血圧の結果であった。

患者は脳死のPICU滞在の17日目に死亡した。

症例3:6歳女児

既往歴のない6歳女児が発熱、呼吸窮迫、昏迷、低血圧性ショックを呈した。

患者はPICU入院の14日前に水痘を呈した。
血行動態不全は心エコーおよび心筋炎と血管麻痺と関連していた。SARS‐CoV‐2 RT‐PCR (気管吸引物)の結果は陽性であった。

患者はStaphylococcus aureusが肺、血液および脳脊髄液を伴う敗血症性ショックを発症した。患者は適切な抗生物質と静脈内免疫グロブリン療法を受けた。一過性の改善後、患者は壊死性肺炎、難治性低酸素血症、および心膜炎を発症した。

心膜液中にSARS‐CoV‐2が同定された。患者はECMOを受け、 14日目に大量の脳出血に関連した急性神経学的悪化と脳死があった。

PICU入室15日目に死亡した。

症例4:4歳男児

急性リンパ芽球性白血病の難治性再発に対して化学療法を受けた4歳男児。

入院中、患者は両側性肺炎による咳と急速な呼吸困難を発症した。

SARS-CoV-2を鼻咽頭スワブおよび血液検体からPCR法で同定し、ヒドロキシクロロキンおよびインターロイキン6受容体拮抗薬を投与した後、インターロイキン1受容体拮抗薬を投与したところ肝毒性が生じた。

患者は最初に標準酸素療法(鼻カニューレ)を必要とし、一過性に改善した。

10日目に急性呼吸窮迫症候群に進行する急速な呼吸悪化があった。

患者は挿管されたが、難治性低酸素血症と多臓器不全を発症した。

別の病原体は同定されず、 SARS‐CoV‐2は気管吸引物中に見出された。
患者はPICU滞在の14日目に死亡した。

症例5:17歳女児

てんかんおよび重大な新生児脳症の病歴のある17歳の少女は、両側肺炎と関係した発熱を示す呼吸困難のため来院した。

RT-PCR法によりSARS-CoV-2は鼻咽頭スワブで同定され、非侵襲的人工呼吸を施行した。しかし、基礎疾患が非常に重篤であったため治療中止を決定したため挿管は行わなかった。

患者はPICU滞在9日目に死亡した。

Dr.KID
Dr.KID
詳細な経過の報告はありがたいですね。

まとめ

フランスの単施設で、PICUに入室した27例の小児の報告でした。

患者の特徴、臨床所見、検査所見、疾患管理および転帰を記述しています。死亡した5例についても詳細な経過が記載されていました。

 

第2回のアンケートが始まっているようですね↓↓

 

Dr. KIDが執筆した医学書:

小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。