今回の研究は、中国において行われた、小児のインフルと新型コロナを比較したものです。
- 単施設の入院例を利用して比較
- この施設においては、インフルより新型コロナのほうが軽症の傾向
- インフルは浸潤影が、新型コロナはすりガラス影が多い傾向
中国の武漢小児病院からの報告です
研究の概要
背景・目的:
武漢で新型コロナウイルス感染症が大発生し、小児においても、疫学および臨床的特徴にかなりの注意が払われてきた。
臨床医がインフルエンザウイルスのような他の呼吸器感染症からCOVID‐19を鑑別することも重要であり、本研究が行われた。
方法
本研究は後ろ向き研究で、新型コロナウイルス患者(n=57)とインフルエンザA患者(n=59)の2群において、臨床症状、画像および治療を分析・比較した。
結果:
症状
それぞれの症状の比較は以下の通りです:
新型コロナ | インフルA | |
咳 | 70.2% | 98.3% |
発熱 | 54.4% | 84.7% |
胃腸症状 | 14.1% | 35.6% |
検査結果
検査結果の比較は以下の通りです:
新型コロナ | インフルA | |
WBC (x10^9/L) |
7.87 | 9.89 |
好中球 (x10^9/L) |
2.43 | 5.16 |
CRP (mg/L) |
3.7 | 15.1 |
PCT (mm/h) |
0.09 | 0.68 |
リンパ球 (10^9/L) |
4.58 | 3.56 |
画像検査
画像所見(CT)の比較は以下の通りです:
新型コロナ | インフルA | |
すりガラス陰影 | 42.1% | 15% |
浸潤影 | 5.2% | 25% |
結論
新型コロナウイルス感染症の臨床症状および検査は、 5歳未満のインフルエンザAの小児よりも軽度である傾向があった。
さらに、画像検査の結果は、新型コロナウイルス感染症では、すりガラス陰影として提示されることが多い。
感想と考察
同じ時期に入院となった新型コロナウイルスとインフルエンザAの比較です。
この論文の結論では「インフルAと比較して、新型コロナは症状は軽い」と述べていますが、そもそもこのデータでこの比較がナンセンスな気がします。
通常、小児科診療であれば、インフルAを診療した際に本人の全身状態を含め見立てを予測して、重症度を判断します。これは経験によるところが多く、むしろ小児科医は沢山インフルAを診察してきたからこそ、入院の適応をしぼれるわけです。
一方で、新型コロナはどうでしょうか。未知のウイルスです。しかもこの時点は3月のデータです。軽症であっても入院させるでしょうし、仮に入院の適応がなかったとして、それでも保護者は入院を希望する方が多いのではないでしょうか。
単一の病院で行われたこういった比較は注意して解釈する必要があります。「入院した小児」のみに絞られているのです。どのようにデータがサンプルされたのか、そこに想像力を働かせる必要があります。
まとめ
今回は中国の単施設から報告された、インフルAと新型コロナウイルスの症状、臨床所見を比較した研究でした。
第2回のアンケートが始まっているようですね↓↓
「コロナ×こどもアンケ-ト」その2
コロナ禍におけるこどもたちの生活と健康現状の調査、第2回。
下記に該当する方、ご協力をお願いします。① 7~17歳のお子さま
② 0~17歳のお子さまのおうちの方たくさんの方の声が集まると、社会を動かす大きな力になります。https://t.co/5dmmrB97h0 pic.twitter.com/ApdgprkGTK
— 国立成育医療研究センター (@ncchd_pr) June 15, 2020
(2024/11/21 21:25:58時点 Amazon調べ-詳細)
Dr. KIDが執筆した医学書:
小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています