小児科

小児ITPにおいて、無治療経過観察はIVIGやステロイドと比較してどうか?[トルコ編]

今回は、トルコにおいて、小児ITP(免疫性血小板減少症)で異なる治療方針で、その経過を報告しています。

ポイント

  •  2002年のトルコからの報告
  • IVIGや大用量のステロイドは、数日以内の血小板数増加は急速
  •  10日〜30日でみると、血小板数が増加する割合は無治療でもそれほど変わらない
マミー
マミー
ITPになると、重篤な出血を起こしますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

背景・目的

急性免疫性血小板減少性紫斑病 (ITP)の小児50例を対象に、免疫グロブリン静注療法(IVIG) 、 mega-dose methylprednisolone (MDMP) 療法、無治療経過観察を施行し、その予後を比較した。

方法

2002年にトルコから報告された研究になります。対象は生後2ヶ月〜15歳の小児です。

対象となった小児の保護者に、無治療経過観察の説明をし、同意を得られた場合はその治療方針にした。そうでない場合は、IVIGまたはmPSLのいずれかをランダムに使用した。

26名の小児は治療なしで観察され、 12名はIVIGを受け、 12名はMDMPを受けた。治療レジメとしては、

  •  IVIG 0.8 g/kg/dayを2日間
  •  mPSL 30 mg/kg/dayを3日間、その後に 20 mg/kg/dayを4日

だったようです。

Dr.KID
Dr.KID
mega-doseという言葉は初めて聞きました。パルス量を経口投与していたようです。

結果

治療開始後3日で血小板数が>20×10^9́/L(2万/μL)と>50×10^9́/L (5万/μL)のレベルで増加した患者の割合は、無治療経過観察のグループより、IVIGとMDMP群の両方が高かった。

しかし、治療開始後10と30日の血小板数には統計学的な有意差はなかった。

結論

この結果は、長期的にはITPの治療が回復率を増加はさせないが、最初数日の血小板減少症の期間を短縮することを示す。

ITPにおける診療指針は、血小板数よりもむしろ臨床状態に基づいてなされるべきで、粘膜出血があったとしても、無治療・経過観察を好む治療選択もありえる。

もし患者に大量出血があり、早急な治療が必要ならば、早期に安全な血小板レベルに戻す上でIVIGとMDMPいずれかが有効である、その効果は等しいのかもしれない。

考察と感想

3つのグループでの血小板数の推移は以下の通りだったようです。

> 2万/μLの割合

治療後 治療無し IVIG mPSL
2日 67% 67%
3日 42% 92% 92%
10日 81% 84% 84%
30日 88% 83% 75%

> 5万/μLの割合

治療後 治療無し IVIG mPSL
2日 42% 25%
3日 12% 83% 75%
10日 69% 75% 75%
30日 81% 67% 67%

治療開始後、数日以内の血小板数は、IVIG > mPSL > 無治療の順のようです。

一方で、10日後・30日後と中期的にみてみると、血小板数はどのグループでもかわらないようです。

また、重篤な出血(下血)は、無治療経過観察やIVIGにはおらず、ステロイドよる治療を開始した11ヶ月後に生じたいるようです。

Dr.KID
Dr.KID
生命を脅かす出血やヘモグロビンを減少させるような出血があれば、もちろんすぐに治療が必要ですよ。

まとめ

今回の研究は、小児ITPの無治療経過観察をしたコホートと、IVIG vs. ステロイド大量投与を比較したRCTでした。

IVIGとステロイドを使用した場合は、血小板数は数日以内に急速に回復しますが、10〜30日後の血小板数が2〜5万/μLの割合は、無治療経過観察のグループとかわらなかったようです。

 

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。