今回は、世界の小児ITP患者において、血小板数によって出血の重症度が異なるかをみた研究です。
- 2008年の国際データからの報告
- 血小板数とで場合分けをし、出血の重症度を評価
- 血小板数が低いほうが、中等度の出血リスクは上昇
- 重度の出血は、血小板数が2万以上でも、同程度に生じうる
- 頭蓋内出血のリスクは0.15%ほど
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
免疫性血小板減少性紫斑病 (ITP) と新たに診断された小児の管理に関しては議論が分かれている。
重度の出血の定義および頻度は十分に解明されていないが、通常は重度の出血を予防するために薬物治療が行われる。
方法
大陸間小児ITP研究グループ (ICIS:the Intercontinental Childhood ITP Study Group) は、 ITP小児の診断時およびその後の28日間に重度の出血を定義した前向き登録を実施した。
対象は生後4ヶ月〜20歳で、新規発症のITPとした。
結果
2001〜2004年に登録した1106名のITP患者のうち、 863名が診断時とその後の4週間の出血重症度評価に適格で評価可能であった。
25人の子供 (2.9%) は診断時に重度の出血を示した。
血小板数が20,000/mm^3́以下で、診断時に出血がないか軽度の505名の患者のうち、 3名 (0.6%) が28日間以内に新たな重篤な出血事象を有した。
初期治療とその後の重度出血の発症率は統計学的な有意差は認めなかった (P=0.82)
結論
これらの結果は、 ITPの小児では診断時に重度の出血はまれである。
また、治療に関係なく4週間以内の重度の出血はまれであることも示す。
診断後最初の4週間における重度出血の予防を実証することを目的とした十分な検出力を有する治療試験をデザインすることは困難である。
この知見は、 ITP治療の今後の研究は、(重度の出血以外の)他のアウトカムを強調すべきであることを示唆する。
考察と感想
865名の血小板数の分布は以下の通りだったようですね:
- < 20,000/μL: 685名(79%)
- > 20,000/μL: 178名(21%)
中等度の出血は血小板数が低いグループのほうがリスクが高いですが、重度なものはそうでもなさそうです。
まとめ
今回の研究は、小児ITPを血小板数でグループ分けし、重篤な出血の重症度を比較しています。
血小板数が低いほうが中等度の出血リスクは上昇しますが、重度のものは血小板数の影響はほとんどなさそうです。
また、頭蓋内出血のリスクは0.15%と、既報とかねがね一致していると思います。
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