今回は、小児ITP患者において、臨床的な重症度と血小板数の相関を検討した研究です。
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小児ITPを、臨床所見で重症度評価
- 血小板数との相関や、評価者間でのばらつきを推定
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) の小児における出血の定量的評価を可能にするため、今回の研究が行われた。
方法
過去24時間の病歴および身体診察に基づき、出血の重症度を4つの異なる部位(全体、口腔、鼻出血、皮膚)で0~4のスケールで評価した。
結果
ITPの小児は(n=54)は、複数の観察者により109の異なる機会で評価された。この中に、単独の観察者による81回の評価を含む。
出血のグレードは血小板数と逆相関した。
グレード3〜4の出血は、評価が困難な皮膚を除き、稀にしか見られなかった。
グレード4の粘膜または内部出血が7例に認められ。
生命を脅かす出血や致命的な出血はなかった。
全体的および口腔出血と鼻出血の等級付けにおける評価者間での一致率は許容範囲であった。
結論
ITPの小児において出血のスコアリングによる重症度の評価は可能であり、出血のグレードは将来の疫学研究において、臨床的に意味のあるエンドポイントを表す可能性があると結論する。
考察と感想
なんで今更こんな研究を、と思う方がいるかもしれません。
ITPの研究をする上で障壁になっているのは、1つは重篤な出血・頭蓋内出血がかなりレアなアウトカムである点です。アウトカムが稀ですと、必然的にサンプル数が大量に必要になるため、治療方法の比較などRCTでは非常に難しいものとなります。
出血の重症度を定量化に関しては、過去の研究で定義がバラバラです。このため、今回行われたようです。
アウトカムを一致させることで、異なる研究でのメタ解析もしやすくなると思います。
出血の重症度の分類は上記のように提案されていました。
全体の出血の重症度
0 |
None |
どの種類の出血もない |
1 |
Minor |
少数の点状出血(< 100)and/or 5つ以下のあざ(直径 3 cm以下)で、粘膜出血なし |
2 |
Mild |
多数の点状出血(> 100)and/or 6つ以上のあざ(直径 > 3 cm)で、粘膜出血なし |
3 |
Moderate |
明白な粘膜出血(鼻出血、歯肉出血、口腔・咽頭の血液水疱、月経過多、消化管出血など)で、直ちに医学的処置または介入を必要としないもの |
4 |
Severe |
重度の粘膜出血または内出血が疑われる場合(脳・肺・筋肉・関節など)で、直ちに医学的処置または介入が必要 |
5 |
Life-threatening |
頭蓋内出血や生命を脅かす出血(部位は問わない) |
鼻出血のグレード
0 |
None |
なし |
1 |
Minor |
シーツや枕に点状出血および/または鼻孔に血液が認められるが、活動性出血がなく止血のため圧迫も必要でない |
2 |
Mild |
1回以上の軽度の活動性出血で、15分未満の圧迫を必要とする |
3 |
Moderate |
活動性出血が1回以上みられ、少なくとも15分間圧迫する必要がある |
4 |
Severe |
反復性、持続性、and/or大量の出血 |
口腔出血のグレード
0 |
None |
なし |
1 |
Minor |
口蓋または頬粘膜の点状出血 |
2 |
Mild |
1つ以上の頰粘膜の血液水疱で、点状出血が随伴することもあるが、活動性出血はない |
3 |
Moderate |
歯肉、口唇、頬粘膜、または咽頭後部からの間歇的な活動性の出血 |
4 |
Severe |
歯肉、口唇、頬粘膜、または咽頭後部からの重度の持続性出血 |
皮膚の出血のグレード
0 |
None |
新たな皮膚出血はない |
1 |
Minor |
少数のおそらく新しい点状出血(合計100以下) |
2 |
Mild |
少数の明確な新たな点状出血(合計100以下)および/または5個以下の小さなあざ(直径3 cm未満) |
3 |
Moderate |
多数の新しい点状出血(合計100以上)および/または5カ所を超える大きなあざ(直径3 cm以上) |
4 |
Severe |
広範な(何百もの)点状出血および5カ所を超える大きなあざ(直径3 cm以上) |
まとめ
今回は、小児のITPの重症度を臨床的に定義する方法を提案し、それが血小板数とどの程度相関しているのかを見ています。
定義を確実にすることで、評価者間での評価のばらつきを抑制する意図もあったようですね。
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