小児の新型コロナウイルス感染症では、多系統炎症症候群 (MIS‐C) と呼ばれる重篤な状態を来す可能性があります。
今回は、MIS-Cと川崎病・MAS(Macrophage activation syndrome)を比較した報告です。
- MIS-Cと川崎病・MASを比較した単施設研究
- MIS-Cは、川崎病やMASとはやや異なる臨床上、検査上の特徴がみられた
The Royal College of Pediatrics and Child Healthは、Pediatric Multisystem Inflammatory Syndrome temporally associated with COVID-19 (PMIS)と名付けています。
一方、CDCとWHOはMultisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C) と呼んでいます。
研究の概要
背景・目的:
小児の新型コロナウイルス2感染症は、小児における多系統炎症症候群 (MIS‐C) と呼ばれる重篤な過炎症状態を合併する可能性がある。
MIS‐Cの臨床的および免疫学的スペクトラム、ならびに小児の他の炎症性疾患(川崎病や血球貪食症候群)との関係については詳細に研究されていない。
方法
2020年3~6月に著者らの病院(ボストン小児病院)でMIS-Cと診断された症例を後方視的に検討し、臨床的特徴、臨床検査、治療効果を検討した。
川崎病 (KD) およびマクロファージ活性化症候群 (MAS) の歴史的コホートとデータを比較した。
結果:
28名の患者がMIS‐Cの症例定義を満たした。
発症時の年齢中央値は9歳(1カ月〜17歳)であった。患者の50%は既往歴があった。
全患者はSARS‐CoV‐2感染の検査室確認を受けた。
17名の患者 (61%) は集中治療を必要とし、そのうち7名の患者 (25%) は昇圧剤によるサポートを必要とした。7人の患者 (25%) は、完全型または不全型川崎病の基準に合致し、冠状動脈異常は6例で見られた。
リンパ球減少症、血小板減少症、炎症マーカー、 D‐ダイマー、 B型ナトリウム利尿ペプチド、 IL‐6およびIL‐10レベルの上昇はよくみられたが、遍在しているわけではなかった。
血球減少症はMIS‐CとKDでは異なり、高フェリチン血症の程度とサイトカイン産生のパターンはMIS‐CとMASの間で異なっていた。
MIS‐C患者に行われた免疫調節療法はIVIG (71%) 、ステロイド (61%) とアナキンラ (18%) であった。
免疫調節療法を必要としなかった6例を含む全例で臨床的および臨床検査上の改善が認められた。
このコホートでは死亡者はいなかった。
結論
MIS‐Cは、川崎病およびマクロファージ活性化症候群とは異なる臨床的および臨床検査的特徴を有する広い表現型スペクトルがある。
感想と考察
MIS-C vs. 川崎病、MIS-C vs. MASを比較に関して、論文のFigureが多くを語ってくれている印象でした。データのプレゼンも綺麗ですね。
年齢分布
川崎病のほうが、低年齢が多い傾向ですね。
血液検査
MIS-Cと川崎病では、少し異なる傾向にありそうですね。白血球など。
Nが少ない検査もありますが(N =3)、フェリチンはIL-18、CXCL9も少し異なる傾向にありそうですね。
まとめ
アメリカにおいて、小児の新型コロナウイルス感染に関連して生ずるMIS-Cと川崎病/MASを比較した単施設研究です。
MIS‐Cは、川崎病およびマクロファージ活性化症候群とは異なる臨床的特徴がありそうですね。
(2024/11/21 21:25:58時点 Amazon調べ-詳細)
Dr. KIDが執筆した医学書:
小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています