スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。
この理由の1つとして、保護者とのコミュニケーションに悪影響する可能性があります。
今回は、その点を見た論文をご紹介します。
- アメリカで行なわれた研究
- テレビの視聴時間と保護者との会話・こども自身の発声の機会などの関連性を検討
- テレビの視聴時間によって、こども自身が発声する時間や会話の機会が減少し、保護者とのコミュニケーションが減っている
スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。
オーストラリアも似たような方針を出しています。
研究の概要
背景・目的:
本研究の目的は、テレビは親と子の相互作用の減少に関連するという仮説を検証ことであった。
方法:
アメリカで行われている前向きコホート研究のデータを利用した調査である。
参加者は、生後2カ月から48カ月の子ども329人が対象となりました。
最長24か月間のなかから無作為に日付を選び、子供はデジタルレコーダー装着しています。
自動音声認識技術を組み込んだソフトウェア・プログラムが、記録されたファイルを処理して、子どもたちがさらされた音と彼らが出した音を分析しました。
アウトカムには、大人の単語数、子供の発声、子供の会話の順番を設定し、条件付き線形回帰分析を用いて、可聴テレビとアウトカムとの関連を推定した。
結果:
テレビの視聴時間が増加すると、
- 子供の発声 (線形回帰係数, -0.26; 95%信頼区間 [CI], -0.29〜-0.22)
- 発声時間 (線形回帰係数, -0.24; 95% CI、-0.27〜-0.20)
- 会話ターン (線形回帰係数、-0.22; 95% CI、-0.25〜-0.19)
の年齢補正したzスコアが低下する傾向にあった。
また、テレビの視聴時間が増加すると、
- 成人女性 (線形回帰係数、 -636; 95% CI、-812〜-460)
- 成人男性 (線形回帰係数、 -134; 95% CI、-263〜-5)
の単語数も減少する傾向にあった。
結論:
可聴テレビは、識別可能な成人との会話への曝露の低下、子供の発声低下と関係する。
これらの結果は、幼児のテレビ視聴と言語発達遅延との関連を説明するかもしれない。
考察と感想
なぜテレビの視聴時間が長いと、言語発達などに悪影響するのか疑問に思われる方がいるかもしれません。この理由の1つを説明する研究でした。
この論文では、テレビの視聴時間によって、こども自身が発声する時間や会話の機会が減少し、保護者とのコミュニケーションが減っていることがわかりました。
まとめ
今回の研究は、アメリカで行なわれた研究で、テレビの視聴時間と保護者との会話・こども自身の発声の機会などの関連性をみています。
テレビの視聴時間によって、こども自身が発声する時間や会話の機会が減少し、保護者とのコミュニケーションが減っていることがわかりました。
双方向性のコミュニケーションができるよう、テレビの視聴時間およびその仕方には気を配る必要がありそうです。
乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓
Dr. KIDが執筆した医学書:
小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について