小児科

慢性ITPにおける抗リン脂質抗体の役割は?[日本編]

ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体の存在は、以前から言われています。

今回は、ITPにおいて、抗リン脂質抗体がどのような役割にあるのかを検討した研究になります。

マミー
マミー
小児のITPにおいて、抗体検査による診断ってどうなのですか?

Dr.KID
Dr.KID
一般に臨床診断が基本ですが、過去のエビデンスを一緒にみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

 背景・目的

抗リン脂質抗体はITP患者の一部で検出されることが報告されている。

この研究では、ITP患者における抗リン脂質抗体の測定の意義を検討した。

方法

慢性ITP患者の血清が、抗リン脂質抗体に対して陽性の患者(グループA)と非陽性の患者(グループB)の間で、臨床および検査所見を比較した。

対象となったのは27名の慢性ITPで、

  •  男 = 5; 女 = 22
  •  年齢の中央値 40歳
  •  血小板 < 10万 /μL
  •  血小板関連抗体陽性

などが特徴のようです。

抗カルジオリピン抗体 (aCL) はELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)で測定した。

また、ループスアンチコアグラント (LA) は、activated partial thromboplastin time (aPTT) とthromboplastin time inhibition testで測定しています。

診断と測定後に、プレドニゾロン 40-60 mg/日が投与されています。

結果

慢性ITP患者27例のうち7例がグループA(抗リン脂質抗体:陽性)であり、この7例のうち3例が抗リン脂質抗体症候群 (APS) と診断した。

グループB(抗リン脂質抗体:陰性)と比較して、グループAでは、

  • 習慣性流産の傾向があり
  • 血栓症を起こしやすい
  • 骨髄中の巨核球
  • 血小板関連IgG (PAIgG) 陽性細胞

が高頻度であった。

しかし、APSの症状または徴候がない場合、 APSをITP単独グループから区別することは困難であった

結論

 ITPでの抗リン脂質抗体の測定は、 APSの鑑別診断およびその後の血栓症の予防に有用であると考えられた。

考察と感想

実際のデータは以下の通りでした(Table 1より)

グループ A B
N 7 20
習慣性流産 3
(43%)
0
(0%)
血栓症 5
(71%)
3
(15%)
APTT 51.6
(7.1)
31.5
(4.5)
LA + 2
(29%)
0
(0%)
aCL + 5
(71%)
0
(0%)
ANA 5
(71%)
1
(5%)
aDNA 6
(85.7%)
1
(5%)
a-dsDNA Ab 0
(0%)
0
(0%)
Dr.KID
Dr.KID
グループAはAPTTが延長する傾向ですね。

まとめ

今回は、慢性ITPにおいて、抗リン脂質抗体 (APLA)の有無で臨床や検査所見を比較しています。

対象となった成人27名のうち、APLA陽性は7名でした。この7名のほうが、血栓症のリスクは高そうな印象です。

 

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。