小児のITPですが、最大の合併症の1つとして頭蓋内出血があります。
ITPの診断時点という早期の段階で、頭蓋内出血を予測できないか、過去にも数多くの研究が行われています。
今回は、日本の小児のITPにおいて、頭蓋内出血が生じた症例を振り返ってた検討がありますので、紹介しようと思います。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) における全身性エリテマトーデス (SLE) の後期発生のリスクは、現在不明である。
方法
小児のITPにおける頭蓋内出血 (ICH) の頻度および状態を検討するため、日本の病院に質問票を送付した。
結果
頭蓋内出血の報告例
1980年から1995年までに、 35施設のITP患者8人で11例のICHが報告された。
1人の患者はICHを4回生じた。
また、1人の患者のみがICHに起因する死亡と考えられた。
1980~1995年にITP患者772人中4人 (0.52%) にICHが発生した。
血小板数
ICH発生時の血小板数は5.2±3.7×109/l (平均±SD) (n=11) であった。
治療
1980〜1995年において生じたICHの8例のうち4例は、 ICH発症直前に積極的治療を受けていた[例:免疫グロブリン静注(IVIG)]。
ICHの原因は?
7症例 (1980~1995) において、月経 (n=2) とウイルス感染 (n=3) などICH原因と考えられる因子が同定された。
全身性エリテマトーデス (SLE) は、後に3人の患者で発症した。
ITP小児におけるICHの発生率は以前の研究の発生率と比較して減少していないが、死亡率は顕著に減少している。
結論
著者らの結果は、月経、感染およびSLEへの進行が、ITPの小児におけるICHの予測に役立つ可能性を示唆する。
大規模前向き試験がICHのリスク因子を同定するために必要である。
考察と感想
この論文のTable 1に、非常に興味深いデータが記載されていました:
急性 | 慢性 | 合計 | |
ICH | 3 (0.57%) |
1 (0.45%) |
4 (0.52%) |
合計 | 530 | 223 | 772 |
日本の1973〜1983年のICH発症率は、9/2000 = 0.45%だったようです。
また、ICHが生じた9名のうち、死亡した症例は3例でした。
(Long term follow-up of children with chronic ITP in Japan. The reports of Idiopathic Disorders of Hematopoietic Organs from the Japanese Ministry of Health and Welfare, Gunma, pp 384–388)
以上の経過をまとめます:
調査年 | 1973〜83 | 1980〜95 |
N | 2000 | 772 |
ICH | 9 (0.45%) |
4 (0.52%) |
死亡 | 3 (0.15%) |
1 (0.13%) |
Table2〜3のデータを参照すると、以下の点が分かります:
- ICHの症例は、急性ITPが4例、慢性ITPが4例
- 診断時の血小板数は 2000〜37,000/μL
- 6例は、ICHの前にステロイドなど何らかの治療を受けている
- ITP診断〜ICHの期間は、数日〜78ヶ月と幅広い
- ICH発症時の血小板数は、1000〜12,000/μL
まとめ
日本で行われた小児ITPにおける頭蓋内出血症例を中心とした後方視的な検討です。
頭蓋内出血の発症率は0.5%ほどであり、過去の報告や、他国とも同等の結果でした。
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